ニッケイ新聞 2012年1月3日付け
ジウマ大統領が選挙公約にあげた社会福祉政策などが、前政権からの繰越し経費や緊縮財政処置などの影響で思うようにはかどっていないと12月26日付フォーリャ紙が報じた。同28日付エスタード紙は持ち家政策拡充なども報じたが、同日付フォーリャ紙は、10年の児童労働は100万人超とも報じている。
12月31日付フォーリャ紙によれば、ルーラ政権が04年に導入した生活扶助(ボルサ・ファミリア)受給者は、11年には1330万人に増え、支出総額も前年を32億上回る171億レアルに達しているが、当選直後のジウマ大統領が公約した貧困撲滅の道はまだまだ遠いようだ。
ジウマ大統領の選挙公約は、税制改革や保健衛生面の充実など多岐に渡るが、税制改革や国内総生産の5%だった教育費を7%に引上げる件は実質的に棚上げ状態。そういう意味で、保健所8600、救急医療施設500の増設は僅かに前進、持ち家政策〃ミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ〃や6千の保育所建設などはそれなりに進展と評価されているが、公約達成の最大の足かせは財源不足のようだ。
そんな中でも記録的な拡大と評されたのが、極貧撲滅対策の鍵ともいえる生活扶助だ。
ジウマ政権が掲げる極貧の基準は一人当たりの月収が70レアル以下となっており、1620万人とされる極貧者の約4割は青年である事から、青年がいる家庭への扶助額は最高45%調整。従来は3人までだった15歳以下の子供への手当ては5人までに拡充、妊婦や生後6カ月までの乳飲み子も対象とするなどの積極的な取組みが、導入以来2番目となる実質15・7%の支出増、対象者も130万人増加という結果に表れた。
他方、月収1600〜5千レアルの家庭対象に14年までに200万軒の家屋提供という看板政策、ミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ2は、議会での承認に手間取ったりした事もあり予定より大幅に遅れている。12月27日に、人口5万以下の4986市に11万軒の家屋を建設し、その3%は60歳以上の高齢者や障害を持った人とその家族に提供する事が発表された。ブラジル人口の16%は60歳以上だから、拡充された同政策用資金の適用を申請、許可された場合、市長選への影響も大きい。
だが、生活扶助や持ち家政策だけでは極貧撲滅には不充分である事を示すのは、10年国勢調査で判明した児童労働100万人超という実態だ。農村や家内労働などの事情で実態把握は困難な中でも、1日11時間働く11歳児など、北伯中心に人口の6・2%に当たる児童が有給、無給で働き、家計を助けている事が判明している。1日付フォーリャ紙には、国民は顕著な経済成長より社会格差縮小を望んでいるとあるが、富の公平な分配、極貧撲滅は決して容易な業ではない。