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クラコランジア=サンパウロ市ルスで取り締まり=清掃作業も行われる=常用者拡散のおそれも

ニッケイ新聞 2012年1月5日付け

 サンパウロ市ルス区のクラコランジアでの麻薬取り締まりが3日にはじまり、当面は軍警が常駐することとなった。4日付伯字紙が報じている。
 100人の警察官と30人の市民警備隊を導入した取り締まりは、3日午前9時にエルヴェチア通りからはじまり、いつもは常習者がたむろするジュリオ・プレステス広場は正午頃には無人状態となった。軍警による取り締まり当初、常習者たちは石や木材を投げるなどして反抗したが、軍警に立ち退かされた。
 軍警たちは150人の常習者に職務質問し、女性2人をクラック所持で現行犯逮捕した。女性たちはおもちゃで武装していたという。その他6人を警察署に連行したが、後に釈放した。
 また、常習者や路上生活者を立ち退かせたあと、市から派遣された清掃員がクラコランジアの清掃にあたり、その結果7・5トンに及ぶゴミを収集した。
 軍警第13部隊のレアンドラ・ポンテス・ダバギ司令官は今回のこの取り締まりの目的は「麻薬常用者たちを追放するためでなく、麻薬売買そのものを取り締まるため」であると語った。また、軍警が発行した書面では、今回の取り締まりは「ルス地区における街の秩序を再構築するため」と位置付けている。この取り締まりは最短でも今月いっぱい、24時間体制で行われるという。
 だが、その一方、クラコランジアの麻薬常習者たちは、商店街として知られるサンタイフィジェニアなどの近隣の通りに拡散して行った。これに対し、サンタイフィジェニアの商人たちは「ひとつのクラコランジアを取り締まったところで、結局違うところに新しいクラコランジアが移動するだけ。自分たちの地域の治安が心配だ」と不満を漏らしている。また、常用者たちの一部は夕方にはクラコランジアに戻り、軍警たちの前でクラックを吸っていた。
 今回の軍警による取り締まりには、識者の間でも賛否両論が出ている。エスタード紙によると、サンパウロ州検事のアントニオ・カルロス・マリェイロス氏は「常用者のケアをする前提であれば良いこと」と肯定した一方、ジェトゥーリオ・ヴァルガス財団のグァラシー・ミンガルディ研究員は「街の表面だけを美化するのではなく、麻薬売買の元を断たなければ意味がない」と、否定的見解を示している。