ニッケイ新聞 2012年1月6日付け
寿司マシンで日本食業界に新たな波—? サンパウロ市ジャルジン・パウリスタ区で伝統日本食店として長年営業、昨年6月に幕を下ろした『割烹寿し安パウリスタ』の店主、氏家保一さん(73、神奈川)が先月27日から、リベルダーデ区に新店舗をオープンし、日本から導入した寿司マシンで作ったにぎり寿司、巻き寿司を提供している。自らメーカー、輸入業者とやり取りし、「Comercio de Equipamentos SUSHI-YASSU Ltda.」として販売特許を取得した。「機械を見たときこれは面白いと思った。あまりにいい加減な日本食ばかり増えている今、マシン普及で〃最低限〃の味を守りたい」と意気込んでいる。
テーブル40席、カウンター10席。前の店舗に比べればぐっと小規模ながら、一見は普通の日本食レストラン。
メニューは寿司と刺身がメインで、焼きそば、ラーメン、うどんなど日本食全般が用意されている。しかしカウンターの奥にずらりと並んだ寿司マシンの横で「寿司屋というより、これを売るための店です」と言い切る。
にぎり寿司のシャリを成型する機械は、本物のシャリ櫃を模した見た目。寿司飯を入れ、ボタンを押すだけで次々とシャリができ、1時間で1200個ほどが成型できる。
小型のり巻きロボットは、海苔と寿司飯、具を乗せてボタンを押せばあっという間に円形ののり巻きが出来上がり、1時間で3、400本ができる。
その他、のり巻きを自動的にカットする機械やご飯と酢を混ぜてシャリを作る機械、できた寿司を一つずつ包装する機械、わさびをつける機械などもある。製造元は食品機械メーカー「鈴茂器工」(東京都)。
「機械化を進めれば人件費を削減できて経営者の負担が減るし、衛生面でも法対策になる」と利点を話す氏家さんによれば、すべて手作業でやれば5、6人必要なところが、機械は1、2人で済むという。
「日本食ブームだが、職人は素人ばかり。機械でやった方が美味しく、清潔で作業時間も短縮できる」
店で提供する寿司のシャリは実際にこれらの機械で握ったもので、それに職人がネタをのせるだけだ。
「機械をいきなり売ると言っても、どんな風に作れるのか見て実際に食べてみないとわからないだろうからね」。関係業者、レストランを開きたい人向けに、機械の使い方のデモンストレーションを行い、購入した人には説明も行う。
現在は輸入業者からの許可待ち。早々にも輸入が開始される見込みだ。
「寿し安」は午前11時半〜午後3時、夜は午後6時〜10時頃まで。年中無休。住所=Rua Americo de Campos, 46, Liberdade、電話=11・3288・2966/3288・2854。