ニッケイ新聞 2012年1月7日付け
弓場バレエを創立時から半世紀に渡って支えてきたテアトロ・ユバ。半野外の舞台には虫が鳴く声も、風も入ってくる。
61年末、一週間で急造した袖も壁も無かった舞台は、ライトや緞帳を手作りで工夫して徐々に揃え、今の形になった。50周年を迎え、改装を望む声もあったが、費用の問題もあり当面は今のまま存続する。
バレエ団の小原明子代表に生活が厳しくなり、稽古を削る動きはなかったかと聞くと「その逆」とキッパリ。「別々に農作業をする皆が集まり、目標に向かって心を一つにできる場所が必要だった」と話す。
『喜びの歌』で小原代表は「どんな立派な舞台よりもこのテアトロが好き」と語る。
終幕後、風で緞帳が揺れ、劇場が呼吸してみえた。まるで、小原代表の言葉に「まだ役目は終えていないよ」と答えるかのように。(亀)