ニッケイ新聞 2012年1月25日付け
ペトロブラス経営審議会議長を務めるギド・マンテガ財相が23日、次期総裁にマリア・ダス・グラッサス・シウヴァ・フォステル現ガス・エネルギー担当理事を指名したと24日付伯字紙が報じた。承認は2月9日の審議会でだが、南半球最大の石油採掘会社に初の女性総裁が誕生する。
セルジオ・ガブリエリ現総裁がバイア州の政界にとの情報が新聞紙上に掲載されたのは23日。新総裁の名前が発表された時は、誰もが「ああ、やはり」と思ったといわれる今回の交代劇には、株式市場も好感を示し、23日の同社株価は一時5%も上昇した。
関係者らが使う〃グラッサ〃という愛称を自らも好む次期総裁は、ジウマ大統領同様技術畑を歩んできた実務派で、大統領の生き写しともいわれる人物。大統領選後のジウマ氏が当時から総裁にと考えていた事は周知の事実で、大統領の友人でもあるグラッサ氏指名で、ペトロブラスの業績改善と共に、政府とのつながりも強化されるとの見方が一般的だ。
2010年の大統領選後もガブリエリ氏が総裁の座に留まったのはルーラ前大統領の要請によるもので、大統領自身は最初から、2011年中はガブリエリ氏続投と考えていた。
一部では2014年との予測もあった総裁交代が組閣再編と並行して発表された決定的要因は、岩塩層下の油田開発プロジェクトの遅れと12月に予定されていた入札の停止だ。
常に目標の達成度を問う、成長志向の大統領にとり、投資方針などを巡り、鉱山動力相時代から募っていた不満が爆発した状態だ。1月4日には、同氏の出身州であるバイア州知事で政界の父ともされるジャッケス・ヴァギネル氏に交代を通知。同知事への正式通達は、23日の財相発表前に行われた。
一方、後任のグラッサ氏は、1978年にペトロブラス研修生となって以来、同社一筋の技術者で、大統領が南大河州エネルギー局長だった1999〜2002年には既に役付。ミナス州カラチンガ生まれで、2〜10歳の間リオ市アレモン地区に住み、ダンボールの回収などで家計を助けてきたというグラッサ氏と大統領の交友関係は局長時代からのものだ。
燃料用アルコールの供給不足などの問題でガソリンやディーゼルの輸入が増え、昨年は100億ドルの貿易赤字を計上したペトロブラスにとり、岩塩層下の油田開発を含む生産量増加は死活問題でもある。生産増に必要なものを熟知し、目標達成にまい進するタイプの新総裁就任は2月9日の経営審議会後。後任の選出や他部門の理事交代を含む人事は、その後の作業となる見込みだ。
なお、ガブリエリ総裁は、バイア州の局長に就任後、14年の知事選を目指すと見られている。