ニッケイ新聞 2012年2月1日付け
日本国外在住者としては初めて空手範士10段を取得した戦後移民の与那嶺育孝さん。事前に目にしたのは、道着姿に真顔で、道場の看板横に立つ写真。取材前、「怖い人なのでは…」と少し緊張した。
当日、予定されていた記者会見の時間きっかりに、友人で日本から訪れた同じく空手指導者の瀬名波重敏さんを伴って現れた与那嶺さん。強面ではあったが、話し始めると優しげな沖縄の方言が顔を出し、「どこかで会いました?」と笑顔で手を差し出してくれた。
瀬名波さんも、与那嶺さんに輪をかけて穏やかな雰囲気。両氏とも時折冗談を交え、記者の緊張をほぐしながら取材に応じてくれ、頂点に立つ人は人格ができている、というのは本当だと感じた。
印象深いのは、「血を見るのが怖い」と話していたことだ。スポーツとしての空手、というより「心を鍛える」空手がいっそう当地で普及することを、両氏を前に願った。(詩)