ニッケイ新聞 2012年2月2日付け
レアル高による輸入増や国際的な経済危機の影響で生産が伸び悩んでいた工業界は、11月以降回復の兆しを見せていたものの、2011年としては前年比0・3%の成長で終わったと1日付伯字紙が報じた。
2010年は10・5%成長し、2011年第1四半期も好調だった工業界にかげりが見え始めたのは4月。前年同月比2%以上の減産を記録した後は、過剰在庫に解雇といったニュースがついて回っていた。
工業界の足を引っ張った要因には、ドル安レアル高による輸入増加などが挙げられるが、経済危機に見舞われた欧州がブラジル製品を買い控えた事も無縁ではない。また、インフレ抑制努力と国際的な危機の影響で、負債を返せなくなる債務不履行が増えるなど、国内消費にもかげりが出、ブラジル経済も減速化した。
この状況を改善するため、中銀が政策基本金利の引き下げを始めたのが8月で、政府も白物家電などへの工業製品税(IPI)引き下げなどの刺激策と、輸入車へのIPI引き上げなどの保護政策を発表し始めた。
これらの効果が表れ始めたのが11月以降。11月は前年同月比若干のマイナスだったが、12月は前年同月比0・9%増で、ゼロまたはマイナス成長は回避された。
工業生産が0%台の伸びに止まったのは、リーマンショックによる国際的な金融危機下の2009年にマイナスを記録した以外は2003年の0・1%以来で、ブラジル経済の牽引車を自負する工業界にとって2011年がいかに厳しいものだったかが窺われる。
詳細を財別に見ると、資本(投資)財は3・3%、中間投入財(原材料)は0・3%増だが、耐久消費財や半・非耐久消費財は2・0%と0・2%の減。中間投入財の伸びが0・3%だから回復はまだ本物ではないとの声もあるようだ。
増産は医療機器11・4%、自動車産業2・4%、その他交通運輸関係8・0%、金属産業2・6%、非金属類採掘2・6%などで、減産は繊維14・9%、製靴・皮加工10・4%、事務・情報処理機器5・0%、服飾4・4%、家電3・7%などだ。
1月2日付エスタード紙には、工業界は12年も縮小傾向が続くとあったが、2月1日付同紙には、全体の動向を占う在庫や設備稼働率、梱包材料業界の動きからは11月以降の回復の様子が分かるとある。1月も過剰在庫を抱えているのは、昨年10月の8部門から5部門減り3部門に。設備稼働率も昨年9月の78%から90%に回復している。
工業界では、今年半ばからは国内消費にあおられて成長が加速すると見ているが、真の意味での回復のためには、減税や融資の簡便化などにより、国際的な競争力向上が不可欠との声も無視してはならない。