ニッケイ新聞 2012年2月3日付け
著名な外国人移住地といえば花卉生産販売で有名なオランダ移民の「オランブラ」だが、パラナ州中部エントレ・リオスのドイツ系スアビオ人(Os Suabios)移住地のアグラリア農協も世界10大ホップ生産地だと1月23日付けエスタード紙が報道している▼1951年から52年に約500家族が土地を買って入植し、先月初旬に60周年祭が盛大に祝われた。元々はドイツ南西部に住んでいた一民族で、18世紀にバルカン諸国(現クロアチアやハンガリー)に移住して差別を受けて追放され、オーストラリアに避難していた。戦後に米国、カナダ、オーストラリア、アルゼンチンにも渡ったが、ブラジル勢が最も成功しているとか▼最初の十数年は様々な作物を試したが採算が取れず、その間に移住者の半分は欧州に帰るか、都市部に引越してしまった。現在の移住地人員は370人ほど。同農協の売上げの1位は大豆だが〃金のなる木〃はホップで総売上げの3割を占め、ブラジル産ビールの22%はこれを使っている▼今も家庭内言語はスアビオ語(ドイツ語方言)と書いてある記事もある。独ポ両語を教える私立学校を作り、移民資料館、農協の病院まである。01年の50周年記念ではスアビオ語継承と伝統芸能保存を強化する為にブラジル・スアビオ文化基金を作った▼60周年記念では「先駆移民の家」が再建された。初心を忘れないという志だろう。日系百年と奢っていてはいけない。そのような他民族系コムニダーデから学べる点は多い▼今年は日系もピニャールとグアタパラ移住地等が50周年を迎える。ぜひ意義深い事業を実施して欲しい。(深)