ニッケイ新聞 2012年2月9日付け
コロニア史に関する文献の多くは、残念なことに日本語だけだ。150周年のことを思えば、ポ語で詳しく移民史を論じたものがいろんな種類あった方が望ましい。ポ語翻訳版がもっと出版されれば、先人の苦労や先駆的な行いの数々が後世に知られるはずだ▼例えば『移民四十年史』(香山六郎編著)、『香山六郎回想録』(同)、『流転の跡』(輪湖俊午郎著)、『人文研年表』、『埋れ行く拓人の足跡』(鈴木貞次郎)、『物故先駆者列伝』(日本移民五十年祭委員会)、『邦人海外発展史(上、下)』(入江寅次編著)、『芸能史』、『百年史』など挙げればきりがない。パラナ州、ノロエステ、パウリスタ、奥ソロはもちろんアマゾンの地方誌、各県人会記念誌など、基本的な文献がポ語にされていないことは後世への負い目だ▼「二世はコロニアの歴史を知らない」と嘆く人は多いが、彼らの手が届きやすいようにポ語に翻訳する努力ももっとすべきだった。説明する努力をせずに「そんなことも知らないのか」と怒るのは、説明する側の誠意も足りない▼一世が生きている間に毎年2冊、3冊ずつでもいいから、後継世代に知って欲しい歴史をどんどんポ語訳して残すべきではないか。そのようなプロジェクトを作って資金を集め、優秀な翻訳者に入ってもらったらどうだろう▼どんどんポ語版を出せば、それを読んで日系意識に目覚める三、四世世代が将来きっとでてくる。素晴らしいコロニア史の本は既にある。それをいかに有効に活かすかを考えるべきだろう。複数の団体がそれぞれに翻訳を実施し、より多くの文献がポ語化されることを望みたい。(深)