ニッケイ新聞 2012年2月18日付け
パナソニック、NEC、豊田通商、三菱総合研究所の4社の企業連合が昨年から、ここ数年の自家用車やバス利用の増加などによる深刻な交通渋滞問題を抱えるサンパウロ、リオ、ベロ・オリゾンテ、ブラジリアの4都市を対象に、道路交通情報収集システムの導入を提案している。ベロ・オリゾンテでは、今月初めに行なわれた日本祭りに出展し、来場者に説明を行なうため日本から三菱総合研究所の山口行一・専門研究員(41、大阪)が来伯した。
14年のW杯や16年の五輪時に向け、国外の選手団の円滑な輸送や的確な道路交通情報の提供は必須の課題とみて、三菱総研が日本側、豊田通商ブラジルが当地側の対応を担当し、日本から担当者が来伯して各市の州政府や市役所などで営業活動を行なっている。
リオ市では市交通局と日本の総務省が覚書を締結、市内を走行するタクシー10台に車載器を搭載して実験が行なわれている。
各車両が市の中心部や五輪会場、国際空港を接続する幹線道路を中心に走行した結果、約2750キロの車両の走行履歴が収集でき、道路網に正確に反映されることが確認された。
山口さんによれば、導入にかかる予算は6〜10億円。ミナス州知事、ベロ・オリゾンテ市長のほか州の交通局、文化局関係者らが訪れた。「システムは気に入ってもらえましたが、予算が問題のようです」との手応えのようだ。
JICA等から援助を受けられるなら導入できるかもとの声もあったが、「円借款の対象としては金額が低いので難しいのでは」とも。同システムは日本では96年から導入されており、現在では3台に1台が利用している計算だ。渋滞は20%減、二酸化炭素は200万トン余り削減という効果が出ている。
渋滞状況や区間の所要時間など、市内の道路交通状況を把握して都市の交通管制に利用するシステムで、パナソニック製の通信機能を持つ安価な端末を車に搭載し、車そのものがセンサーとなり、最新技術で情報を収集するというもの。
収集された情報は市内の情報を一元管理する交通管理センターなどに流れ、センターに設置されたNECのサーバで情報を処理し、道路交通情報や車両管理情報が生成される。
将来的には表示板など道路上や、システムを持っている人の車のカーナビゲーション、携帯電話にリアルタイムで配信され、視覚的にわかりやすい形で、画面上に渋滞情報や気候情報など運転に有用な情報が表示されるようになるという。
ブラジルでは現在情報を収集するセンサーが道路に埋められているため、センサーをもった機械を車に搭載することで、より生の情報収集が見込める。
現段階ではどこの市も購入する意志を見せていないものの、山口さんは「予算は安価で、日本のメーカーの技術はやはり高い。需要は高いと思うので、どこかで購入してもらいたい」と意気込みを見せた。