ニッケイ新聞 2012年2月25日付け
昨年末までのドル高傾向が一転し、1月以降9%もドルが下落してレアル高となっている状態を是正するため、中銀が23日のブラジル外国為替市場で2度の市場介入を行い、マンテガ財相も、レアル高回避のための準備があると発言したと24日付エスタード紙が報じた。
ルーラ政権時代の10年9月にマンテガ財相が使い始めた「通貨戦争」という言葉がまた飛び交い始めた—。輸出競争力を高めるため、世界各国が自国通貨の為替レートを引き下げようと競う国際的な「通貨戦争」は、今年は一段と激しさを増すとの見解をマンテガ財相が表明した。
「通貨戦争」の現れ方は様々で、米国が数年前から中国が人民元の為替相場を人為的に低く抑えていると批判してきたのもその一例。これに対し温家宝首相は、10年9月のビジネスフォーラムで、米国政府の圧力に屈して20〜40%の人民元切り上げを行えば、中国国内では企業倒産や失業、それに伴う沿岸部から内陸部に戻る人の急増などの社会的混乱も起きると反論している。
一方、米国が自国経済の活性化のために大量のドルを市場に流通させ、世界的なドル安傾向を招いたりしたのも、別の形での「通貨戦争」だ。
ブラジルの場合、為替相場を左右する主要因は、生産部門への外国直接投資や外国人投資家による株式や国債購入などの金融投資、ブラジル企業が国外で受ける融資の三つ。
24日付伯字紙によれば、1月中の外国直接投資は54億ドル、株式市場へも43億ドルが流れ込んでおり、貿易収支での12億9千万ドルの赤字や、外国旅行者が費やした金とブラジルへの旅行者が費やした金との差額13億3600万ドルなどによって生じた70億860万ドルの経常赤字を補って余りあった。
外国からの投資流入は2月も続いており、17日までの集計で41億1千万ドル。外国直接投資や金融投資以外のものも含めた3週間分のドル入超額は1月分の90%に当たる65億2千万ドルに達した。23日も国債分だけで10億ドルがなだれ込んだという。
加速するドル流入を受け、今年のドル価は既に9%下落。「通貨戦争」発言の10年が9月までで25%のドル安となった事を思い出させる状況で、23日のドル価が一時、昨年10月以来となる1・69レアルまで下がったため、中銀が先物と現物の両市場に介入。2月3日と6日に次ぐ今年3度目の介入により、1ドル=1・711レアルで取引を終えたが、先物への介入は11年8月以来の出来事だ。
マンテガ財相は23日にこれ以上のレアル高を避けるための準備は十分整っていると発言したものの、詳細は明かしていない。市場関係者は向こう数日間に中銀が再度介入すると見ており、年末は1ドル=1・65レアルとの予想も出ている。