ニッケイ新聞 2012年3月3日付け
ドイツへの公式訪問を前に、民主運動党(PMDB)議員らが労働者党(PT)の政権運営に対する不満を表明したため、ジウマ大統領がルーラ前大統領を急遽訪問、助言を求めたと2日付エスタード紙が報じた。
PTや政府に対するPMDB下議らの不満表明は共和党(PR)や民主労働党(PDT)に次ぐもので、ミシェル・テメル副大統領も承認の上。ジウマ大統領はサンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポに飛び、ルーラ前大統領と3時間にわたる話し合いを行ったという。
PMDBの下議76人中45人が賛同して作成した抗議文書はテメル副大統領にも送付される予定だが、不満表出のきっかけは、ルイス・セルジオ漁業相の後任に、ブラジル共和党(PRB)マルセロ・クリヴェラ下議を、副大統領にも相談せずに指名した事。
今回の人事は前政権の副大統領、故ジョゼ・アレンカール氏の所属政党への顕彰とされたが、福音派議員のクリヴェラ氏を閣僚に迎え、中絶問題などで起こりうるキリスト教界の反発を抑えるためとの見方が強い。
副大統領にも連絡せず決まった人事は、セルジオ元漁業相が所属するPTリオ州支部へも大統領府からの公表後に通達されるなど、政府のやり方には、PT内でも戸惑いや不満の声がある。
ジウマ政権やPTへの不満は他の与党内でも高まっており、PMDBの抗議行動の他、失った運輸相職を求めるPR、公務員の年金基金問題の国会審議で反対票を投じる議員が出たブラジル社会党(PSB)、大統領官邸で政府批判を行った労組代表のパウロ・ペレイラ・ダ・シウヴァ下議のPDTの扱いなども話し合われたようだ。
そういう意味では、ドイツへの公式訪問は事態沈静化のための小休止となるとの見方もあり、連立与党をこれ以上刺激しないよう、閣僚人事の異動も一週間ほど小休止となるようだ。
10月に投票が行われる市長選の結果は、14年の大統領・知事選の行方をも左右するため、現在1177人の市長数を減らしたくないPMDBは、PRBのサンパウロ市長候補セルソ・ルッソマノ氏にガブリエル・シャリッタ候補と組むよう求めた。また、サンパウロ市市長選を全国レベルで支援しようとするPTに取り入り、14年大統領選で副大統領の座をねらうペルナンブコ州エドゥアルド・カンポス知事(PSD)が、サンパウロ州支部に民主社会党(PSDB)との同盟を放棄するよう迫り支部が反発する動きも出ている。PDTがサンパウロ州PSDBに近づき、カルロス・オルチス氏の州労働局長指名を勝ち取るなど、様々な動きが展開されている。
釣り針にミミズをつける方法も知らないと言っていたクリヴェイラ氏の漁業相就任式は2日に行われ、今後は釣りについても勉強と発言。大統領から涙の謝辞を受けたセルジオ元漁業相は、下議に復職したら政府擁護に努めると約束した。