ニッケイ新聞 2012年3月6日付け
日本の魅力ある地域産品の販売拡大を通じて海外に〃日本らしさ〃を普及すると同時に、日本の地域中小企業のブラジル進出を支援する、日本の経済産業省の推進事業『クール・ジャパン』がブラジルでのプロジェクトが昨年から始動している。その一環の市場調査として先月28日夜、サンパウロ市内のレストラン「らん月」で、日本の伝統工芸品を中心としたテーブルウェア(食器類)の展示会とアンケート調査が行われた。当地のデザイン評論家や専門誌記者、ホテル関係者、グルメ雑誌記者ら業界人約150人が招待され、華やかな雰囲気の中、商品に思い思いの評価を下した。
『クール・ジャパン』では、米国、シンガポール、中国、韓国、伊、仏、インドなど世界各国で13の事業が展開されており、当地の事業計画としては「ホテル、飲食店等に日本の地域産品を売り込むため、現地アンテナショップの設置等、現地消費者の嗜好を把握し、地域産品を提案する」という内容だ。
昨年10月からホテルや飲食店等を対象に調査が行われ、専門家や関係者の反応をもとに商品の募集や選定がなされた。
展示品選定を担当した藤村京子事務所の藤村京子さんは、参加者に商品の一部を説明し、「特殊な技術を要する伝統工芸品で、新たなデザインやコンセプトを取り入れているメーカーのものを選んだ」と紹介。
食器類のほか調理器具、コーヒーメーカー、スプーン、コースターなど138点。有田焼や九谷焼、金箔を貼った黒塗りの食器など伝統工芸品が並ぶ一方、インテリアとしても楽しめる一風変わった嗜好の商品もみられた。
ブラジル対象の事業計画を受注した企業グループの中心で、JTB法人東京の石川智康氏は参加者に対し「日本にある良いものを世界各国に紹介することが目的。こういうものがあると知ってもらい、広めてもらえれば」と呼びかけ、「展示品は一握りだがデザイン性に優れている。色々な意見を聞いてブラジルで愛してもらえるように展開を図りたい」と話した。
会場を訪れた大部一秋在聖総領事は「細やかさやあでやかさなど、本当の意味での日本の良さが広まれば。全魂を注ぎ込んで作られた作品を通じて、日本文化の奥深さを感じてもらいたい」と挨拶した。
市内の日本食レストランに勤める山根ソニアさん(38、二世)は、「一つひとつの商品に対する説明が少なかった。これほどの値段が付けられる価値がどういうところにあるのか、理解されれば、確実に売れると思う」と話していた。
最後は日本食のシェフでレストラン「藍染」のオーナー、小池信氏が刺身や寿司を皿に盛り付けるデモンストレーションを行い、参加者の注目を集めていた。