ニッケイ新聞 2012年3月9日付け
想定を下回る2011年の経済成長を受け、中銀の通貨政策委員会(Copom)が経済基本金利(Selic)を9・75%に引き下げ、2010年7月以来となる1桁台とした。8日付伯字紙が報じている。
今回のSelicの引下げは7日の委員会でも満場一致ではなかった。0・75%ポイントの引下げを主張したのは5人で、0・5%ポイントを主張した理事は2人。市場では先週まで0・5%ポイントとの予想が大半だったが、今週に入ってそれ以上引き下げとの予測が強まっていた。
過去4回を上回る引下げの要因としては、米国や欧州、日本などの低金利国が、3年間で総額8兆8千億米ドルの注入を行ったことで、ジウマ大統領が「津波」と称した大量のドルがブラジルをはじめとした高金利の国に押し寄せたことや、6日に発表されたブラジルの国内総生産(GDP)が国際通貨基金(IMF)の世界成長予想をも大きく下回る2・7%で終わったことなどがあげられる。
Selicは昨年8月から5回連続で計2・75%ポイント下がったことになり、Copomが1月に示唆していた、2010年7月以来となる1けた台となった。
今回の0・75%ポイントの引下げに関する中銀の発表を聞いた経済アナリストたちの間では、下落傾向はまだ続くとの見方が強まっている。
MCMコンスルトーレスのアントニオ・マンデイラ氏は「Selicは年内に9%まで下がる」と見ており、ヴォトランチン・コレトーラのロベルト・パドヴァーニ氏は「4月に0・75%、さらに5月に0・5%下がって、2012年は8・5%で終わる」と予測している。仮にパドヴァーニ氏の予測通りとなれば、2009年7月に記録したこれまでの最低値、8・75%をも下回ることとなる。
Selicがここまで下がると懸念されるのはインフレだが、中銀は、近年の国際的な金融危機により、大きなインフレは起きないと予測し、経済活動の活性化を優先させた形となった。ただし、政府の公式インフレ目標の4・5%の達成は難しく約5%のインフレが予想されている。
一方、経済活動の活性化は急務で、マンテガ財相は7日、これからは毎週景気刺激策を発表と発言。地理統計院(IBGE)の7日の発表によると、1月の工業生産は、自動車産業の30・7%減や鉱業の8・4%減が響き、前月比2・1%のマイナスで、世界的な経済危機がはじまった2008年12月以来最低の数字となった。経済学者のアントニオ・コレア・デ・ラセルダ氏は「1月がこの数字だと、第3四半期の数字が期待できない」と警鐘を鳴らしている。同氏によると下半期には盛り返しが予想されるものの、2012年の工業部門の成長は2%を切ると見られている。