ニッケイ新聞 2012年3月23日付け
赤字経営やプラザッキ売却が問題とされてきたサンタクルス病院で、病院を運営するサンタクルス日伯慈善協会の総会が19日夜に開かれ、NEC・ド・ブラジル元社長の石川レナト氏(72、二世)を理事長とする21人の役員の単一シャッパが承認された。2010年9月に突然辞任した菜切健児理事長(当時)に代わり、約1年半理事長を務めた中矢レナト氏は第一副理事長、日本料理界の有名シェフ、ジュン・サカモト氏は第二副理事長、評議員会長には二宮正人氏(CIATE理事長)が決まった。横田パウロ理事長時代に理事を務めた石川氏は20日午前に開かれた記者会見で、「大きな挑戦」と表情を引き締め、「過去に興味はない。新たなページをめくるだけ」と意気込みを見せた。
問題となっているプラザッキについては、「加入者が9千人で、利益が上がらない」とし、「これから理事会で話し合っていく。売却も一つの選択肢」と明言を避けながらも、「売却か、他の保険会社とともに運営するか。いずれにしても我々だけでは運営は不可能」との見解を示した。
役員の90%が入れ替わった今回のシャッパ。石川氏は今年はじめに中矢氏から理事長就任の話が持ちかけられたといい、本紙の取材によれば石川氏、ジュン・サカモト氏ともに医師会から指名されたという。
指名された理由として石川氏は「中立の立場で、成功者だと思われたのでは」としており、経営危機を指摘した医師会と理事会との軋轢は今後解消に向かうことが予想される。
現状を石川氏に問うと、「わからないが、今はもう喧嘩はしていないのでは」と述べるにとどめた。
石川氏によれば、現在の銀行負債は3200万レ。「病院の規模からするとこの額は大きい」と指摘し、経営を立て直すための方策として「収入の増加」を第一に挙げた。
年間利益を現在の1億3千万レから1億8千万レまで引き上げると同時に、「売上額の7割を占める固定費を削減する」との目標を語り、「長期計画で解決していくしかない」と付け加えた。
「職員のリストラや採算の合わない科を少なくすることもあるか」との質問に明確には否定せず、「そういうこともあり得るが、患者へのサービスは絶対下げない」と宣言した。
1983〜2002年までNEC・ド・ブラジルの社長を務め、軍事政権の名残で政府に経営管理の介入を受けた状況下で、「市場に投資することで経営を立て直した」と自負する石川氏。今後発揮されるであろう経営手腕に期待される。
理事長就任後、「少なくとも1年目は週3回、最低でも週2回は病院に来て仕事を行う」との意思を示し、「NECでは技師たちと働いてきたが、ここでは医師と手をとることになる。土台は融和することにある」と医師会と協力して運営していく姿勢を強調し、「全て私次第。病院の信用を取り戻していきたい」と力を込めた。