ニッケイ新聞 2012年3月31日付け
【既報関連】インドのニューデリーで開催された第4回BRICS首脳会議は29日、金融協力やイラン問題など、50項目にわたる共同声明を採択して幕を閉じたと30日付伯字紙が報じた。
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国首脳による会議は、28日の夕食会に始まり、現地通貨での貿易決算その他の合意に達した上、BRICS開発銀行の創設についても検討を続ける事などを盛り込んだ声明を採択した。
EUやメルコスルなどの経済域と違い、参加国同士の違いが目立つBRICSだが、今回の会議では、世界銀行や国際通貨基金の再編要請や、5カ国間の貿易は自国通貨建てで行うなどでの合意と開発銀行設立に向けた準備など、金融協力の面で大きな進展を見た。
BRICS5カ国は現在、世界全体の国内総生産(GDP)の20%を占め、貿易額も世界貿易総額の15%、世界に対する経済貢献率はほぼ50%など、近年とみに影響力を増しているが、これら5カ国が懸念するのは世界経済の行方だ。
ユーロ圏に代表される市場の不安定さと、先進国が導入する「不当な」金融政策が世界経済と自国経済の成長を阻害するのではとの不安は5カ国共通の懸念事項だ。
また、世界銀行の総裁は米国、国際通貨基金の総裁は欧州から選出という60年続く伝統を打破し、両機関内での発言力を高めたいというのも共通の願いで、二つの国際金融機関への協力には5カ国の発言権拡大を条件付けた。だが、国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアや中国とそれ以外の国の利害関係などがかみ合わず、世銀総裁候補は一本に絞れないままで終わった。
一方、途上国のインフラ整備資金を支援し、国際金融体制の再建にも重要な役割を果たしうると賞賛されるBRICS開発銀行の創設についても、資金調達のために早期創設を願うインドや南アと、他国に頼る必要のない中国、自国に開発銀行があり、積極的になれないブラジルなど、立場の違いが表出。インドが総裁は持ち回りにと提案したのに対し、中国は自分達が指揮をとの意向を示すなど、今後の調整も必要で、定款などの準備とたたき台の完成が13年、発足は14年かそれ以降と見られている。
また、経済、金融問題以外の主要議題となったのはイラン問題。米国などが唱える経済制裁に同調するロシアは、今会議でも他国の同意を得ようと務めたが、ジウマ大統領は、ブラジルは取り立てて言うほどの交易関係はないと前置き後、中国やインドのようにイランから石油を購入している国もあり、経済的に孤立させた場合の影響はイランだけに留まらない上、平和目的のための核利用の道を閉ざす事にもなりうると主張。対話を放棄して強硬手段をとる事は危険との認識を示した。