ニッケイ新聞 2012年4月10日付け
ブラジルの経済力が増し、失業率も低下する中、労働者が職場を変えるペースが速くなり、自分から離職する人の割合が増えていると6日付フォーリャ紙、9日付エスタード紙が報じた。
雇用増や所得向上による順調な国内消費に支えられ、09年の国際金融危機もいち早く危機を脱したとされるブラジルでは、国内消費の伸びが購買力向上を目指した転職などにつながり、ブラジル経済を更に押し上げている。
11年のブラジルの経済成長率が2・7%に留まる中で気を吐いたのは4・1%伸びた国内消費で、工業不振などの叫びの中でも、消費意欲は簡単に冷え込みそうにない。
消費熱の継続には消費意欲を満たすだけの収入も必要だが、現在のブラジルは熟練労働者も単純労働に就く人も不足しているのが実情で、2月の失業率は2月としては02年の統計開始以来最低の5・7%だった。
失業率の低下は雇用者と被雇用者の力関係にも影響し、より良い給与や条件を求めて転職する人は、熟練者、非熟練者を問わず増えている。
10年から11年にかけて所得が伸びた代表はサービス業で、家政婦などの家庭内労働者の5・8%を筆頭に、平均3・4%所得が増えた。その他では建設業の8%が群を抜くが、工業の給与の伸びは0・4%だった。
国際的な金融危機が勃発した09年は失業率が若干増え、自発的な離職者が減ったものの、労働者にとり、給与がよくて安定した職場を望むのは自然の流れ。職場を変える、自分の好きな仕事をやってみたいなどの理由で辞職する人は、03年の16・8%が11年には28・3%に増加。今年最初の2カ月では、320万人近い離職者中30・5%の96万9千人が辞職者だ。
もちろん、会社側が解雇する例は現在も多く、今年の場合、離職者に占める辞職者の割合が高いのは、サンタカタリーナ州46・2%、パラナ州40・1%、南大河州35・9%などで、割合が低いのは、ピアウイの11・8%やパライバの12%、リオ・グランデ・ド・ノルテの13・7%など。特殊な技術などを持ち、引く手あまたの熟練労働者は他社からの引き抜き、また、建設業界などでは少しでも高い給与の会社に移るために辞職する例が多いという。
人件費を抑えるために給与が安くてすむ若者を好む企業もあるが、昨今は、生き残りをかけた投資や開発研究のために、質の高い労働力の確保や従業員の教育・研修の必要を感じている企業が増えている。
2月の雇用創出は昨年同月比57%減となったが、ブラジルの雇用は欧州経済危機が甚大化しない限り緩やかに拡大し続けると見られ、給与の良い会社に移るためとフリーランサーとして独立するためとで、昨年中に2度辞表提出というヴァネッサ・ゲーデスさんのような例も増え続けそうだ。