ニッケイ新聞 2012年4月10日付け
キリスト教儀式が全国で繰り広げられる受難日の6日、サンパウロ市セントロのクラコランジア跡地でも、「十字架の道行き」行われた。7日付伯字紙が報じている。
警官が麻薬常用者を追い出す前はクラコランジアの中心だったグレテ通りのプラッサ・サグラード・コラソン・ジェススでは、元常用者がローマ兵役、同じく元常用者で現在カトリック団体勤務のジョゼ・リナウドさん(39)がイエス・キリスト役を務めて行進。ジャマイカのレゲエ音楽風の髪型にジュースの缶で作った茨の冠という姿は、クラコランジアならではのイエス像だ。
同地区での「十字架の道行き」は午前9時30分から始まり、約300人が参加。イエスは正午に、ジュリオ・プレステス駅前で十字架に磔(はりつけ)にされた。
受難日の企画を担当したジュリオ・ランセロッティ神父は、今回のクラコランジアでの「十字架の道行き」を通し、「軍警やゴム弾は通りの人々を傷つけただけで、根本的な問題を何ら解決していないことを示したかった」と語っている。
同地区では1月3日から軍警による強制取り締まりが行われ、運び屋容疑で376人を逮捕、97人を収監。常用者415人を入院させ、883人を締め出したが、「クラコランジアの位置が変わっただけ」と批判の声が高く、「解決の道は連帯と公共政策しかない」とランセロッティ神父も語っている。今回のこの式に関して、軍警はただ見守るだけだった。
ローマ兵がイエスを侮る場面では、毎日の生活の場で侮辱されたりした経験を語るよう促され、5人がそれに応じたが、「住所が不定だから働けない」との言葉には「それは働きたがらずに放浪する言い訳にすぎない」とローマ兵が答える一幕もあった。
また、次期市長選の民主運動党(PMDB)候補のガブリエル・シャリッタ下院議員も道行きに参加し、マスコミのインタビューには、サンパウロ市の麻薬対策に対する批判で応えた。また、エドゥアルド・スプリシ上院議員(労働者党PT)もパーカー(モレトン)にスニーカーという普段着姿で登場し、近隣住人と長い立ち話を行った。
「十字架の道行き」の儀式は全国的に行われ、サンパウロ州のアパレシーダ市では、大聖殿からクルゼイロの丘までの2キロの行進に4万人が参加した。
また、全世界で「十字架の道行き」が行われる中、ローマ教皇ベネディクト16世は経済危機に苦しむ欧州に向けて「神の家族は孤独ではない。愛なるイエスがあなた方と共におられる」とのメッセージを発表した。