ニッケイ新聞 2012年4月11日付け
8日から米国を公式訪問中のジウマ大統領が9日、オバマ大統領と1時間半にわたる首脳会談の時を持ち、先進国の金融緩和政策に対する懸念を伝え、米国の責任を問う姿勢を見せたと10日付伯字紙が報じた。
ジウマ大統領の初の米国公式訪問は8日に始まり、8日はブラジルの企業家達との会議などに出席。9日は、オバマ大統領との首脳会談や昼食会、伯米の連携についてのセミナー出席など、慌ただしい日程を精力的にこなしている。
オバマ大統領との会談は、予定を大幅に上回る1時間半に及ぶものとなり、会談後の記者会見でも、米国を始めとする先進国が国際的な金融・経済危機を乗り切るために採った金融緩和政策が、世界経済に甚大な影響を与えている事への懸念を伝えたと発言した。
ドイツを公式訪問した時もメルケル首相に同様の趣旨の発言をし、同首相から保護主義への警告を受けたジウマ大統領だが、今回の米国訪問でも厳しい切り口は変わらず、米国などの金融緩和政策がドル安レアル高といった為替の不均衡を招いたと苦言を呈した。
先進国の通貨が価値を失った事は新興国へのドル流入と為替不均衡の原因で、自分達の国を守ろうとして採られた過剰な金融緩和政策は、全世界を、経済の停滞と物価の持続的な上昇が並行して起きる〃スタグフレーション〃の危機にさらしているというのがジウマ大統領の見解だ。
ジウマ大統領の懸念表明にオバマ大統領がどう応えたかについて、ホワイトハウス側は発言を避けているが、ジウマ大統領は、米国は自国経済の動きが多くの国に影響を及ぼす事を自覚する事が必要とも述べている。
一方、ピメンテル商工開発相は8日、伯米間の貿易が不均衡となっている事への懸念を表明。オバマ大統領は9日の会談で「我々の通商・投資は過去最高水準に達しており、両国で雇用と正気を創出」と述べたが、ブラジルの入超傾向は08年から強まり、現在のブラジルへの輸入額は輸出額を82億ドル上回っている。
貿易不均衡は為替の不均衡とも関係するが、ブラジルの工業不振は、技術や生産性の問題とも絡んでおり、「通貨の津波」だけでは説明できない。その意味で、技術開発、学術研究などの分野での協力は大いに推奨されるべきで、ブラジルも科学技術の向上を念頭に置いた奨学金制度などを充実させていく所存だ。
他方、ブラジルから米国への旅行者が急増している中、オバマ大統領はブラジル人へのビザ発給能力を今年中に40%高めると発言。ミナス州のベロ・オリゾンテと南大河州のポルト・アレグレへの領事館開設も発表された。
なお、04年から話合いが続いているビザ免除も、障害となるものが少しずつ取り除かれてきているとされ、近い将来実現するとの見込みが一段と強まっているようだ。