ドキュメンタリー映画「時折」上映会=撮影地 グラミーニャ移住地で
ニッケイ新聞 2012年4月12日付け
【既報関連】マリリア市近郊にあるグラミーニャ移住地を追ったドキュメンタリー映画「時折」(伯仏日共同制作、110分)が6日夜、撮影に協力した家族のために同移住地で上映された。
サンパウロ大学卒業後、フランスの大学院で映画を専攻した33歳のパウロ・パストレロ監督。子どもの頃から毎年、グラミーニャ移住地に隣接する祖父の農場に遊びに来ていたという。
「平凡に見える生き方が、歴史にどのような意味を与えるのか」。ドキュメンタリー監督としてテーマを追いかけるようになった頃、自身の幼少の記憶に強く残る「日本人の隣人たち」を思い出し、2作目となる長編映画のテーマに据えた。
スペインから移住してきた亡き祖父の思い出に重ねながら、日系家族の歴史だけでなく、日本で働く三世たちや、生き別れの記憶を持つ出身地の親戚たちを、2007年から4年間かけて追った。
上映会場となった「会館」は、昨年まで25年間放置されていたが、撮影をきっかけに改修。新しいイスやスクリーンが持ち込まれた会場には、移住地の家族だけでなく近郊の親戚もつめかけ、サンパウロ市に住むパストレロ監督の両親や、助監督を勤めた妻の織田典子さんらも参加した。
感覚的な構図で切り取られたブラジルと日本を行き交うノスタルジックな映像、織り込まれた移住当時の動画や写真に、観客は思わずスクリーンを指差したり、うなずいたりしていた。
愛知県蒲郡市のシーンで、土産にもらったアルマジロのはく製を前に「これは昆虫なのか鳥なのか」と考え込むお婆さんに、笑いが起こっていた。
作品に登場した布野懐(87、岡山)さんは上映後、「苦労したが、今こうして体調を気にかけてくれる家族や仲間に囲まれている自分は幸せ者」とあらためて人生を振り返った。布野さんの孫、三世のカシア・ユリコさんは「美しい映像。移民の始りの物語に、思わず涙してしまいました」と話した。
入植した家族全てが描かれていないことや、二世の描写が少ないことに物足りない感想も聞かれた。撮影したものの映画に登場していない人たちには、監督自身が一軒ずつ家を訪れて、編集という作業を説明し理解を求めていた。
「時折」は昨年、文協大講堂で試写されたほか、先月のブラジル「E Tudo Verdade/It,s All True」国際ドキュメンタリー祭に招待作品として上映された。今年中に日本やフランスでの公開が予定されている。