ニッケイ新聞 2012年4月14日付け
ブラジルの歴史上の人物として今も語られるランピオンに関する新たな伝記が、ランピオンを同性愛者だとする記述が問題となり裁判所から発売を差し止められた。13日付伯字紙が報じている。
ランピオンは19世紀末から20世紀前半に北東部に出没したカンガッソ(盗賊)の中でも最も有名な人物で、初の女性カンガッソとなった妻のマリア・ボニータと共に、犯罪者としてだけでなく、「貧困にあえぐ人たちのために戦った義賊」と目されている。また、ランピオンの時代のカンガッソは映画や歌の題材としてもよく引用され、伝説として語り継がれている。
今回問題となったのは「ランピオン・マッタ・セッチ」という著物で、2011年11月6日にバイア州サルバドールで1千冊を売った後、ランピオンの娘であるエスペジタ・フェレイラさんが訴訟を起こしていた。
それに対し、11年11月25日、セルジッペ州アラカジュ市の第7裁判所のアルド・アルブケルケ裁判官が暫定差し止め命令を下していたが、今回行われた審議で同裁判官がこの暫定令を再び支持した。最終的な決定は17日に下される。
この伝記の作者であるペドロ・デ・モライスさんは、15日以内に上告するとし、「もし裁判に負けて検閲を受けつづけたら、残っている1千冊をセルジッペ川に捨てることになる」と語った。
また、定年退職した元判事でもあるモライスさんは「アルド(・アルブケルケ裁判官)は偏見で判決を下した」と語っている。アルブケルケ裁判官はこの本を読んでいないが、憲法の基準に照らし、個人の人権侵害に当たるとして差し止め命令の判決を下していた。
問題の伝記では、ランピオンはマリア・ボニータと夫婦生活を営む一方でルイス・ペドロという男性と関係を持っていたとしているが、「それは1960年代からずっと言われている話だ」と語り、1938年にランピオンが殺されたポッソ・レドンドで判事として働いていた頃から研究をより深めていたという。また、この伝記とは別に、モライスさんはエスペジタさんがランピオンの実の娘であるかどうかも疑わしいと語っている。モライスさんによると、ランピオンは1922年に生殖器に被弾して性的不能者となっており、エスペジタさんを1932年に産むのは矛盾があるとしている。
なお、ブラジルの有名人に関する伝記の差し止め問題はここ数年続いており、2006年にはサッカー選手のガリンシャ、2007年には歌手のロベルト・カルロス、2008年には小説家のギマランエス・ローザ、2009年にはロック歌手のハウル・セイシャスの伝記が問題となった。