ニッケイ新聞 2012年4月18日付け
秋祭りで鶴我博文さんから聞いた「かつては自分達で作る、自分達のための祭りだったが、今では市民全体のものになった」との言葉が耳に残った。多くの地方日系イベントがその道を辿っている▼アチバイア花と苺祭り、アルジャー花祭り、ピエダーデ柿祭り、レジストロ灯ろう流し、ノロエステ盆踊り、マリリアのジャポン・フェスチ、ロンドリーナ日本祭りなど、みな地方最大級の行事に育っている▼特徴的なのは「Akimatsuri」という日本語が、モジではそのまま広く知られていることだ。中山喜代治理事長も「以前はポスターにFesta de Outonoとも入れていたけど、今はAkimatsuriが普及したから入ってない」と笑う。ドイツ移民の有名なビール祭りオクトーベル・フェストもドイツ語そのままだから、同じようなものか▼40万都市モジにとって入場有料で8万人が集まる行事は大きい。しかも来場者の6割は非日系、市民全体のイベントに成長した。そうなるとあらゆる地元政治家が放って置かない▼市長、市議、地元紙「オ・ジアリオ」営業部長がズラリと開会式に並んだ。30万レアルもの助成金はサンパウロ州政府からだ。かつては総領事館に陳情して日本から支援をもらったが、百年祭前後からこうした地元密着型の日系団体のあり方は普通になってきた。今後さらにこの傾向は強まる。地方文協の役割がこの10年間で変化してきたと実感する▼一般市民に溶け込みつつも、日系としての核心は残す。モジ市長が言ったように「自分達の過去をしらないと、未来は作れないし、まして現在も活かせない」との言葉は、日系人にとっても深い意味がある。(深)