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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年4月21日付け

 上坂冬子さんという作家がいた。保守派の論客であり、サンパウロでも講演したことがあるが、彼女は北方領土の返還に命がけで取組み、戸籍も国後島に移すほどの熱の入れようだった。東京の石原慎太郎都知事も、これに負けないような「日本の領土を守れ」であり、米ワシントンの講演で「東京が尖閣諸島を買取る」と爆弾宣言し、日本は大騒ぎになっている▼あの「太陽の季節」には驚いたが、この魚釣島などの購入計画には仰天するしかない。それもこれも、尖閣諸島に対する中国の不法侵犯へ不満が爆発したのだろうが、さすがに都知事の政治的センスは抜群だと評価し「よくぞ云って呉れた」と拍手を送りたい。東京都の幹部や職員も、この石原発言には慌てふためいているそうだが、都庁には都民から200回を超える電話があり、90%以上が「知事の発言を支持する」と話しているそうだ▼尖閣諸島の管轄権を持つ沖縄・石垣島の中山義隆市長も「買取り発言」を大喜びし、石原知事と会い詳しい話を聞きたいと心を踊らせている。さあ—困ってしまったのは野田首相と藤村官房長官などのお偉方である。ああいう方々にとっては、突飛な話であり奇想天外な計画と映ったのに違いなく、さてどうしたらいいものか—と混迷するばかり▼それでもやっと首相が「国有化も」と落ち着いたらしいが、さて本当にやる気があるのかどうか。国の所有にして防備のために自衛隊を駐在させるほどの意気があれば大いに結構なのだが、兎にも角にも議論を重ね—北方領土と竹島や尖閣は日本の領土と強く世界に訴えるのが筋と言う物である。(遯)