ニッケイ新聞 2012年4月25日付け
日本の食事情や〃万能調味料〃である醤油の用途の多様性をブラジルに広く伝えるため、キッコーマン株式会社・ブラジル駐在員事務所(森和哉代表)は先月11日から6日間、当地で活躍するシェフら4人を招いた『日本の食文化事情視察旅行』を実施した。レストランオーナーのマルセロ・フェルナンデス、割烹『木下』の村上強史、ステーキハウス『インサイド』のオーナー・マルセロ・アエビ、食材販売業者エジソン・マルトゥッチが参加した。同行した森和哉代表、企画に協賛した「道クルツラル」の高橋ジョー代表による報告会が23日にあった。
森代表は冒頭、「サンパウロ市の日本食店は約800軒。高級店からファースト・フード感覚のテマケリアまで様々という状況は世界でもあまり例がない。地理的に遠い日本の文化が浸透しつつあるのはすごく嬉しいし、日本食がブラジル文化と融合して変化していくのも大歓迎」と話す。
その一方で、オリジナルの日本食や調味料を知らず、見よう見真似で作ったものが日本食として定着していくことに対する懸念から、当地の食文化の中心的役割を担う人々に〃本場〃を体験してもらい、オピニオン・リーダーとして情報発信してもらうという本事業の趣旨を説明した。
コンビニやスーパー、注目のレストラン探訪を通し、B級グルメから高級日本食に至るまでその現状やサービスの実態を体験。千葉県野田市にあるキッコーマンの工場、長野県小諸市で同社が運営するマンズワイン・ワイナリーで食材の生産の過程を見学した。短い期間で体験した日本文化を、それぞれの視点から語った。
「ブラジルでは醤油はサラダと刺身用と思っているが、どんな料理にも使える」(エジソンさん)、「色んな醤油を比較したが、キッコーマンの醤油だと素材が黒くならず、艶が出て生き生きとした色になる」(アエビさん)「食材の味を引き出せる調味料」(フェルナンデスさん)「中華、フランス、イタリアなど様々な料理で使え、広い可能性を秘めている」(村上さん)など、醤油の質の違いや用途の多様性に関して意見が多く出された。
食文化に限らず「街の様子から食事、対応に至るまで全てがブラジルと違って感動的。何故日本製商品の質がいいかが分かった。100%有意義な旅行だった」(アエビさん)「別世界に行ったみたいだった」(フェルナンデスさん)など、日本社会・文化そのものに対する驚きも語られた。
6度目の訪日となったフェルナンデスさんは本紙の取材に対し「日本製のワインがあることを初めて知れたことと、以前から見たいと思っていた醤油の醸造過程を見学できたことが大きな収穫。これからは自分の体験を元に、客や従業員に醤油の説明が出来る」と満足そうに話した。