ニッケイ新聞 2012年5月12日付け
地理統計院(IBGE)が9日、政府の公式インフレ指数である拡大消費者物価指数(IPCA)が、4月に0・64%上昇と発表。3月のIPCAは市場の予想以下の0・21%だったが、4月が一気に3倍となった事で、経済基本金利(Selic)引下げへの影響が懸念されていると10、11日付伯字紙が報じた。
IBGEによれば、4月のインフレは、3月比で2倍になった食料品価格の他、煙草や薬の価格と家庭内労働者の賃金の上昇が響いたという。年に1度の調整を行った後者3項目が4月のインフレに占めた割合は38%に及んだ。4月のIPCAはここ1年で最大の上昇率で、1月からの累積インフレは1・87%、過去12カ月間の累積は5・10%になった。
ただ、4月のIPCAが予想以上に上昇したのには、2月29日の1ドル=1・709レアル以降続く、ドル高レアル安の傾向も関係する。
ブラジル企業の国際競争力をそぎ、〃通貨の津波〃という表現まで生んだドル安レアル高傾向は、年頭の1ドル=1・870レアル以降も続き、一時は1・70レアルを割り込まないように中銀が介入していたほどだ。
この流れがドル高に変わったのは3月からで、以後の流れはドル高に傾き、10日の終値は、1ドル=1・966レアルにまで至った。
ドル安が是正されれば工業界の国際競争力が回復すると考える人々には歓迎材料だったはずの為替は、1ドル=1・90を超えた頃から懸念材料に変わり、輸入品の値上がりや、輸出増を見込んで国外向けに振り分ける量を増やしたため、国内用の供給が減った牛肉の値上がりなどがインフレ圧力になってきた。
アルゼンチンや南伯での大豆の不作は4月に大豆製品の値上がりとなって表れ始め、5月の卸売物価にも影響するなど、食料品は今しばらく高値が続きそうだが、ドル高がどこまで進むかも気がかりな状況だ。
フェルナンド・ピメンテル商工開発相は8日、中銀の目標はもはやインフレ抑制ではなく、経済成長と雇用創出、社会福祉だと語っており、その翌日に、4月のIPCAは3月の3倍と発表されたのは皮肉な話だが、アレッシャンドレ・トンビニ中銀総裁は10日、4月のインフレが予想を上回った事を認めた上、今後3カ月のインフレは4月ほど上昇しないとの見解を発表した。
このような動きの中で問題になり始めたのは、経済金本金利(Selic)の引下げがいつまで続けられるかで、インフレが再燃すれば、今月末に年8・5%、今年中には8%以下になるとの予想も覆りかねない。インフレを再燃させずに経済を成長させ、為替も安定させるという神業を演じなければならない中銀総裁や政府の経済スタッフの役割は、ますます重要になってくる。