ニッケイ新聞 2012年5月17日付け
コロンビアの首都ボゴタで15日、元内務相兼法務相のフェルナンド・ロンドーニョ氏を標的とした爆弾テロがあり、2人が死亡、39人が重軽傷を負った。16日付伯字紙が報じている。
事件が起きたのは、15日午前11時(ブラジル時間午後1時)頃。フェルナンド・ロンドーニョ元内務相(67)が乗る防弾車が、ボゴタ市のカラカス大通りと74番通りとの交差点の信号で停車した時、隣り合わせた乗客のいないバスで爆発が起きた。
これにより、バスとロンドーニョ氏の乗った車が大破し、被害は近くにあった8台の車や数軒の建物にも及んだ。現場はボゴタを代表する繁華街で、同市の金融の中心地にもほど近く、周辺はパニックに襲われた。
ロンドーニョ氏は血を流しながらも1人で車から逃げ出した。その後、病院に運ばれ、頭部と胸部のケガの手当てを受けたが命には別状はない。
だが、同乗していた運転手とボディガードが死亡し、他に少なくとも39人(16日付サイト情報では48人)が重軽傷を負った。15日に在コロンビア日本大使館が出した文書では、バスの運転手と元内務相の運転手兼ボディガードの2人が死亡と記載している。
今回のテロは、2003年2月にナイトクラブでの爆発で36人が死亡したものに次ぐ、大規模なものとなった。
また、このテロの数時間前には38キロの爆薬を乗せた車が発見され、警察が運転手を逮捕しており、同じグループの犯行と見られている。
今回のテロはコロンビア革命軍(FARC)が強硬に反対していた、コロンビアと米国との間の自由貿易協定(TLC)の発効当日に起きており、ボゴタ都市警察のルイス・エドゥアルド・マルチネス将軍は、手口から考えて、犯行はFARCによるもの以外にありえないと語っている。
また、ロンドーニョ氏の所属する保守党が、FARCとの間の平和状態を保つべく、議会に提出されていた政治犯への恩赦や減刑の法案に反対していたことも理由ではないかと見られている。
ロンドーニョ氏は2002年にアルヴァロ・ウリベ前大統領の第一次政権時代の内務相に就任、汚職疑惑で04年に辞任に追い込まれた。04年11月には、イタリアのコンソーシオにボゴタ〜ヴィラヴィセンシオ市間の道路建設事業を不正に取り計らったとして、政治活動を15年間禁じられた。スキャンダルの多い政治家だが、現在は辛口政治評論家として有名で、新聞・雑誌に多数のコラムを持ち、今回の事件の直前も自身の持つラジオ番組に出演していた。フアン・マヌエル・サントス大統領は事件後、FARCへの言及を避けつつも「全身全霊を込めてこの許しがたい犯行を批難したい」との声明を出し、犯人逮捕に協力した人に1億ペソの報奨金を出すと発表した。