ニッケイ新聞 2012年5月17日付け
援協傘下の自閉症児療育学級「青空学級」(PIPA)の主催で、自閉症児療育の専門家、平雅夫氏の講演会が5日午後、援協本部であった。専門家や学生、自閉症児をもつ保護者など非日系人を中心に109人が来場した。講演は約4時間にわたり、熱心にメモを取る来場者の姿も見られた。
薬を使わない生活療法を実践する「学校法人武蔵野東学園」で進路指導主任、主任研究員などを歴任。JICAの派遣によりウルグアイで学校設立に携わったほか、セルビアでも学校設立や講演活動などを行った経験があり、大学で教鞭をとるほか日本自閉症スペクトラム学会の資格認定委員も務める。初めての来伯。
平氏は冒頭、「日本で自閉症の人はかつて千人に一人だったが、今は100〜200人に一人。当たり前にいる人たち」として、自閉症の人々の就学や雇用状況、特別支援教育の沿革、現状などを説明した。
生活療法について「24時間体制で薬を使わず、その人の特徴を理解することが基礎になる」と定義。自閉症の人にみられる特徴の一つとして、物事を計画して実行するために必要な機能『実行機能』の障害を挙げ、「健常者にとっては当たり前のことがなかなか難しい」とした。
自閉症の人に対してはゴールを明確にして短く簡潔に指示することが肝要で「指示が理解できなければ行動に移せず、周りからは『すぐあきらめる』『考えなしに行動する』『言うことを聞かない』などと誤解される」と説明。例えば小さな声で話すように指示をするときは、その通り言うのではなく、「ささやくように言うなどして指示をイメージしやすいようにする」と例を挙げた。
その他、「自分はできるという気持ちを育てること、困ったときに助けを求めてよいと教えることで人とのコミュニケーションを容易にしてあげること、常に環境を整然とすることで余計な刺激を与えないこと」など、療育にあたって重要な点を説明した。
講演の締めくくりとして、「どうしても障害に焦点が当てられがちだが、彼らの可能性を信じ、能力や特徴を理解しながら教育していくことが必要。これからもPIPAに協力して、可能性を少しでも広げられるよう支援し、皆さんと教育にあたりたい」と話し、大きな拍手が起こった。
「来て良かった」—。そう嬉しそうに話したのは、モジ市から訪れた横澤喜好さん(74、長野)、愛子さん(68、二世)夫妻。日本に自閉症の可能性がある5歳の孫娘がいるという。
「ひきつけがあって話ができず、医者にかかっているが薬を処方されるだけ。日本にいるときはこういう療法があることを全然知らなかった。さっそく子供に連絡したい」と笑みをこぼした。