ニッケイ新聞 2012年5月17日付け
「薬物依存は国内で増えている病気の一つ。中でもクラッキは最も体に害を与える」—。そう注意を喚起するのは、サンパウロ州イタぺセリカ・ダ・セーラにあるサンタモニカ病院の理事で、サンタクルス病院元院長の尾崎ミルトン氏(59、三世)だ。
同病院では、ドラッグが与える損害について一般市民に意識付けをする「意識化プロジェクト(Projeto Consciencia)」を進めており、尾崎氏は調整役を務める。
同病院の精神科医らが約1時間講演し、大麻、コカイン、アルコール、煙草の影響についても言及。保護者が子供に薬物についてどのように話をすべきかの指導もある。
同病院では2010年から、120床を割り当てるなど薬物依存による精神障害で入院する患者への治療に力を入れており、依存から立ち直ったカウンセラーや精神科医、救急医療に携わる臨床医からなる150人以上の協力者を含む医師集団がいる。
世界保健機関(OMS)のデータによるとブラジル内だけで約600万人のクラッキ常用者がおり、麻薬対策局(Senad)の研究結果では、治療を受け効果が現れている、治療を受けながらも常用し続けているのがそれぞれ3割、その他は様々な要因で死に至ると見られている。また85%が、殺人や障害事件、麻薬売買などの犯罪に関わっている。
保健省では、2014年までにドラッグ常用者が更正するための取り組みに全伯で20億レを投資するとしており、その一つに13万5千の病床設置も予定されている。
サンパウロ市での今年の投資額は約640万レ。150床を新たに設置、病床数は3年で1600床を超えるとみられ、16カ所の診療所開設も見込まれている。
また昨今、46の連邦大学病院の改善や再構築に6200万レの特別予算を組むことを保健省が発表。この予算はREHUF(連邦大学病院の拡大と改善プログラム)の一部で、医療機器の購入や改修、患者対応の拡大などに充てられる。
尾崎氏は「問題は山積しており、麻薬常用は人種や社会階級を問わず広まっている。想像以上にリスクは高い。クラッキは一度の使用では終わらず、徐々に体を蝕んでいく」と警告する。
講演会はこれまで複数の企業や団体で実施されており、尾崎氏は日系社会でも「希望する団体で実施したい」と話している。実施場所はサンパウロ市内のみで、料金は無料。
問い合わせや申し込みはサンタモニカ病院(11・4667・1455)、または尾崎氏(11・9322・1926)まで。