ニッケイ新聞 2012年5月26日付け
中央銀行が25日、個人と企業を総合した4月の債務不履行は5・8%に達し、09年8月に記録した5・85%以降最大値となったと発表したと同日付各紙サイトが報じた。
失業率は6・2%から6%に落ち、雇用状態は悪くはないが、ローンなどの返済が90日以上遅れる債務不履行が3月の5・7%より上昇、15日以上90日未満の遅れも8・5%という数字は、政府の消費促進策の限界を感じさせる。
債務不履行は個人レベルの方が多く、3月の7・4%が7・6%に上昇。企業向けの融資に関する債務不履行は、3、4月とも4・1%で変わりがなかった。
債務不履行は融資目的によっても発生率が違い、車やバイク購入に伴う債務不履行は、3月の5・7%が5・9%に上昇。また、銀行などからの個人融資での債務不履行は5・3%が5・5%に、家などの資産獲得のための融資での債務不履行は12・9%が13・4%に増えた。唯一の例外は特別小切手で、10・6%だった債務不履行が10%に減った。
なお、家屋購入のための融資利用額は3月比2・3%増えて2226億4600万レアルに達しており、この額は、直近12カ月で42・9%増えている。
車のローンの返済遅れは、5年を超えるローンが組めなくなり、月々の負担額が増えた事なども影響している。より長い期間で返済できる融資を組んで残額を返済し、家計への負担を減らすのも債務不履行に陥るのを避ける手段の一つだ。
一方、中銀が懸念するのは、融資を受けるための担保として、家や車を使う場合。複数の融資に同一物件を担保として使うのを避け、債務不履行に伴う財の差し押さえなどの際のコントロールを容易にするため、中銀も担保としての家や車の情報管理に乗り出す。担保としての車の情報については管理台帳的なものが既にあるが、家屋に関する管理台帳の作成は初めてで、車や家を担保にして金を借りる場合、中銀のシステムへの登録が必須となる。
個人融資やクレジットカード、特別小切手などを利用して発生するクレジットの総額は、国内総生産(GDP)の49・6%に達しており、その44・2%は、ブラジル銀行や連邦貯蓄銀行といった公的銀行による融資だという。
今年度の経済成長率は3%を割り込む可能性もとりざたされる中、住宅ローンなどへの銀行融資を増すための1〜4月の政府支出は、昨年同期の約3倍と25日付フォーリャ紙が報じているが、21日に発表された工業製品税減税などの景気刺激策が、一部専門家から08、09年の国際金融危機以来代わり映えのない政策と批判された事も記憶に新しい。
債務不履行の発生率が09年並みの状態では、消費促進策だけで景気を回復させるのは容易ではなさそうだ。