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森林法の行方は決まらず=大統領の裁可は部分的=12項目に拒否権を使用=リオ+20後に国会審議

ニッケイ新聞 2012年5月29日付け

 ジウマ大統領が25日、環境保護のための森林法中、12項目に拒否権を使用、32カ所に修正を加えたと26日付伯字紙が報じた。これを受け国会は、リオ+20後に拒否権の使用を受け入れるか否かを検討、修正箇所については4カ月以内に再審議がはかられる事になった。

 下院が承認した案を上院が修正、下院が再審議の上で承認という紆余曲折を経た森林法は、大統領裁可後も、半ば宙に浮いた状態のまま、リオでの国際会議を迎える事となった。
 6月20—22日に開催される「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」を目前に控えての森林法の裁可は、ジウマ大統領に下院承認済みの法案を完全に拒否するよう求める署名も約200万件に及ぶなど、国内外で注目を集めていたが、期限となる25日、12項目を拒否、32箇所を修正の上、裁可された。
 この数字は、ペペ・ヴァルガス農業開発相、イザベラ・テイシェイラ環境相、メンデス・リベイロ農務相、ルイス・イナシオ・アダムス総弁護庁長官が行った25日の記者会見で明らかにされたもので、拒否項目や修正箇所の詳細は28日付官報に掲載というやり方に、環境問題の専門家も農業者側の議員らも肩透かしを食らった。
 環境相らは25日、08年7月22日に森林法が改定される前に行われた森林伐採への恩赦はないという事などを明らかにしたが、マリーナ・シウヴァ元環境相らは、期待通りの内容ではないと失望の色を隠さない。
 というのは、従来なら所有面積の80%保護と定められていた法定アマゾンでも、国立公園や先住民保護区の面積が州全体の65%を占める時は所有面積の原生林の伐採を50%まで認めるという部分の裁可で保護すべき森林面積は減少。川周辺の伐採地回復も、所有地の規模と川幅により5〜100メートルの幅で再植林との規定新設などで、実質的な恩赦は保持されたためだ。
 ジウマ大統領は、28日付官報で、小規模農家を守り、えびなどの養殖者を保護する一方で、河川や海の汚染、環境破壊を防ぐなど、国民全体の関心に応える形で拒否権使用や修正を行ったと弁明。拒否権を使用した箇所は、上下両院が共同で検討し、受け入れるか否かを決める事になるが、民政復帰後に大統領拒否権がひっくり返された事は3回のみだ。
 修正箇所はリオ+20も終わり、環境問題への熱が冷めた状態で審議される事もあり、アダムス総弁護庁長官は、政府の意向を大きく損なう事なく承認されると踏んでいるが、環境保護派も農業派議員も完全に納得できない裁可案には、193カ国の代表が集まるリオ+20開催国として胸をはれる内容かも含め、賛否両論が起きている。