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景気を牽引できない工業界=過剰在庫抱える分野増=成長はGDPの4分の1=トラック会社でレイオフも

ニッケイ新聞 2012年5月31日付け

 2011年の国内総生産(GDP)の伸びが振るわず、経済成長の足を引っ張ったといわれた工業界で、4月から5月に過剰在庫を抱える業種が増えたと29日付エスタード紙が報じた。30日付フォーリャ紙にはトラック、バス製造会社の生産調整などの記事もあり、景気を牽引するに至るのはいつか、見通しさえつかない状況だ。

 ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)の調査によると、2008年の国際的な金融危機前と11年末を比べた場合、GDPは10・1%伸びたのに、工業界全体の成長は2・6%。また、5月時点で過剰在庫を抱える業種は、4月を二つ上回る6に増えたという。
 FGVがいう過剰在庫は適正在庫を10%以上上回った状態を指し、14業種中6の業種が過剰在庫を抱えた状態という事は、これらの業種では生産調整などで減産を強いられる可能性が強いという事にもなる。
 過剰在庫を抱えた業種は、3月に三つ、4月が四つだったが、それが更に増えたという事は、4〜6月(第2四半期)の工業界の成長は振るわないという事も意味する。
 5月に過剰在庫を抱えているとされたのは、輸送材料、家具、機械、繊維、衣類と靴、非金属の6業種で、11業種の動きが止まった08年11月よりはましだという。
 建設資材を含む非金属や家具については向こう3カ月の予想が上向きになっているというが、輸送材料の波ダンボールなどは、他の業種の動向を占うものだけに、工業全般の回復はいま少し時間がかかりそうだ。
 08〜11年の比較で落ち込みの大きいのは、繊維業16・7%や靴・革製品12・7%、衣類5・6%。これら3業種に共通するのは、中国などからの輸入の増加が著しい事だ。
 18日付エスタード紙によると、市場に占める輸入製品の割合は22・2%に達し、輸入衣類の市場占有率は、2010年の7・4%が11年には10・6%、今年3月までの12カ月累積では12%と加速している。
 一方、在庫がだぶついているからと、21日に工業製品税(IPI)の減免処置がとられた自動車業界では先週末、減税率以上の割引をする大売出し(フェイロン)を実施。1日で1千台販売といった成果もあげた店も出たが、トラック・バス業界では、大サンパウロ市圏サンベルナルド・ド・カンポのメルセデス・ベンツが29日、同社初の1500人のレイオフ(再雇用前提の一時解雇)を発表。集団休暇や有給利用で賄えないほど、状況が悪化した証拠だ。
 同業種ではScaniaやMAN、Volvoも6〜20日間の操業停止などを決めており、関連部品会社も集団休暇や解雇を発表し始めた。
 鉱業界ではドル高などで輸出促進の見方もあるが、工業界全体の春の到来は遅れそうだ。