ニッケイ新聞 2012年6月2日付け
スイスのビジネススクール、経営開発国際研究所(IMD)が発表した世界競争ランキングで、ブラジルの順位が59カ国中46位に低下したと5月31日付伯字紙が報じた。国内経済で15位もランクを下げたりした理由の一つは、生産効率の悪さだが、1日付エスタード紙は、その遠因ともなる保護主義が進んでいる事も指摘している。
経済のパフォーマンスやビジネスの効率性、政府の効率性、インフラ整備度の4分野を更に細項目に分けて評価したランキングは、11年に6、今年は2下がっている。
特にランクが落ちたのは、資本の流れや公共投資、インフレ、為替、貿易などを含む経済活動の分野で、国内経済では15、労働市場では12、ランクを下げた。
ブラジルのランク低下の要因は、為替の下落やインフレ圧力の上昇、重税、ブロクラシーなどが挙げられるが、昨年のランク低下を招いた生産効率の悪さも重要な要因だ。
失業率は国際的に見ても低く、雇用の拡大で国民の所得は向上、国内消費も伸びているが、消費の伸びを支えているのは輸入品という状態は手放しで喜べない。
このあたりが貿易では56位という数字にも表れているのだろうが、輸送インフラが54位という点は、輸送費がかさんで商品価格が高くなる、原材料の輸送や輸入経費もかさむため生産コストが高くつくといった悪循環の原因ともなる。
また、労働者の学歴や学力、技術力の不足などが新製品開発に投資しても生産ラインが動かせないといった問題をもたらしている点は、一朝一夕では解決できず、生産性の向上を遅らせている。
一方、経済活動の失速状態が続いている事で、5月31日に発表されたのは、9月1日からの輸入品の二輪車や電子レンジ、エアコンへの工業製品税(IPI)の10〜20%引上げ。5月に発表された自動車のIPI減免税で税収が減る分を補うためのビールや炭酸飲料などの飲み物への増税も発表された。
輸入品の課税率引き上げは、税的優遇処置のあるアマゾナス州マナウスで生産される工業製品を保護するためだ。だが、世界競争ランキングに関する記事に、保護主義が生産性の改善努力を阻害しているとある点や、世界貿易機関(WHO)などの国際機関が、国内産業保護のために採った政策でブラジルが突出していると発表した事を考えると、製品や技術開発のための政府支援や減税政策の拡大といった政策が必至だ。
5月31日には4月の工業生産が前月比0・2%のマイナス成長、1日には第1四半期の国内生産(GDP)は前期比0・2%の成長に止まったとの地理統計院(IBGE)の発表が続く中、社会経済開発銀行(BNDES)や民間銀行のクレジット拡大も含めた、中長期的なてこ入れ政策の必要度が増している。