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サンパウロ州=違法中絶で陪審裁判に=麻薬中毒の無職女性めぐり

ニッケイ新聞 2012年6月5日付け

 麻薬中毒の無職の女性が、2006年に中絶を行ったため、陪審裁判にかけられることとなった。4日付エスタード紙が報じている。
 サンパウロ市内陸部の人口8500人の町、パウロ・デ・ファリア在住のケイラ・ロドリゲス被告(37)は06年10月31日、100レアルで不法に購入した妊娠中絶の錠剤を市内の病院で注入。強い陣痛を起こして入院したが、すでに妊娠5カ月だったため、通常分娩の過程を経て11月2日に615グラムの女児が誕生。女児は20日後に感染症で死亡した。
 この件は看護婦のひとりが警察に告発し、検察局が起訴したが、ケイラ被告は財政的理由で弁護士が雇えなかった。弁護士条例によって便宜がはかられ、特別に弁護士をつけることが出来たが、ケイラ被告は2人の子供を母に預ける路上生活者で、アルコールと麻薬の中毒患者。弁護士は裁判までに一度しか会えなかった。裁判の日も酔った状態で現れた被告は、中絶を試みたことを認めた上、「後悔している」と語った。ミレーナ・レプロ・ロドリゲス判事は被告の状況から、被告の取った行為は合法的で、中絶に対する刑事責任は問えないと判断した。
 マルコ・アントニオ・レリス・モレイラ検事は裁判所の決定に不服で、上告。「21世紀にもなって妊娠経験者が避妊対策もできず中絶の罪を犯すとは嘆かわしい。若い人たちへの警告の意味でも上告した」と語るモレイラ氏は陪審裁判でも徹底してケイラ被告を告発する構えだという。
 一方、ケイラ被告担当のマリア・ド・カルモ弁護士は陪審裁判というサンパウロ州地裁の決定に驚きつつも、「本人はもう後悔している。陪審裁判でも無罪になると信じている」と語っている。

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