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国立公園や保護区を制定=リオ+20を目前に=ジウマ政権では初めて=有機農法の規定は後回し

ニッケイ新聞 2012年6月7日付け

 『世界環境デー』の5日、ジウマ大統領が現政権初の国立公園や保護区の制定を発表と6日付伯字紙が報じた。国連持続可能な開発会議(リオ+20)を2週間後に控えての『緑のパック』発表には、先住民代表らから万雷の拍手が送られた。

 先住民保護区だけで約100万ヘクタールという『緑のパック』は大統領官邸の貴賓室で発表され、普段ならベロ・モンテ水力発電所建設への反対声明などで矛先鋭い先住民代表らも、惜しみない拍手を送った。
 『緑のパック』の発表はリオ+20を目前に控えた『世界環境デー』のメインイベントで、先住民が要請してきた先住民居住地に関する政策も、イザベラ・テイシェイラ環境相から発表された。
 歴代大統領による先住民保護区などの制定は政権初年に行われる事が多い。法定アマゾンの水力発電所建設のために保護区を縮小させる暫定令に署名した事と共に非難されていた大統領にとり、同パック発表は、環境保護や先住民文化、動植物の生態保護を軽視している訳ではない事を明らかにする絶好の機会だ。
 5日発表の先住民保護区は、アマゾナス州5カ所とアクレ、パラー両州各1カ所で、最小4587ヘクタール、最大26万972ヘクタールの区域に住む先住民が恩恵に与る。
 また、リオ・グランデ・ノルテ州にフルナ・フェイア国立公園、パラナ州にボン・ジェズス環境保護区を新設。バイア州のデスコブリメント国立公園と、エスピリトサント州ゴイタカゼス、セアラ州アラリペ—アポディの両国立植物園の区域拡大も発表された。
 『緑のパック』は発表ぎりぎりまで内容を詰める作業が行われ、有機農法に関する規定や原油漏出に対する対処法の制定などは、今後の対応を待つ事となった。
 緑の服を身に着けたジウマ大統領は『緑のパック』発表に際し、「環境保護を忘れた成長や、所得の分配、蓄財はエゴイズム以外の何ものでもないが、成長や富の分配、社会階層の底上げを伴わない環境保護は持続性に欠く」と発言。
 並行して、生物多様性に関する名古屋議定書の承認を要請する文書も議会に送付された。同議定書の目的は遺伝資源の利用で生じた利益を公平に配分する事で、資源に関連した先住民の伝統的知識も利益配分の対象とする事を定めている。
 先住民保護区などの制定は、環境問題などへの政府の取組みをリオ+20を前にアピールすると共に、ベロ・モンテ水力発電所その他の経済活性化計画(PAC)への批判の矛先をそらす目的と見られ、日頃はベロ・モンテ反対を唱えているソニア・グアジャジャラ氏ら、先住民代表もこの日は歓迎一色だった。
 ただ、環境保護団体などは、内容はまだまだ不充分で、現政権の環境問題への取組みはほとんど前進していないと厳しい見方を崩していない。