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通訳なし、孤軍奮闘の18歳=サッカーの西村竜馬選手=マウアー4部リーグ所属=グローボTVも取材

ニッケイ新聞 2012年6月12日付け

 「皆とは違う環境に身を置きたかった」—。先月29日にグローボTVの「グローボ・エスポルテ」に登場し、「通訳がいない日本人選手」として報道され一躍話題となった日本人がいる。サンパウロ州4部リーグのサッカーチーム「グレミオ・エスポルチーボ・マウアエンセ」(サンパウロ州マウアー)でプレーする西村竜馬選手(18、長野)だ。「珍しいから取り上げられただけ。技術はまだまだ」といたって謙虚だが、同チームのジョゼ・アパレシード・デ・ソウザ監督(58)は「将来有望。プロとして活躍が期待できる」と太鼓判を押す。通訳もおらず孤立無援の中で夢を目指し、ボールを追いかける。契約が切れる今年11月末までに、どれだけ活躍できるだろうか。

 来伯は高校を卒業したばかりの今年3月。Jリーグ『アルビレックス新潟』のユースでプレーしていたおり、プロチームにいたブラジル人、パラナ州で選手経験のある日本人と懇意に。「グレミオ・マウアエンセ」との契約は、彼らのつてで実現した。
 「自分のいた環境からプロを目指すのは難しかった。チームメイトはほとんど大学に行ったが、皆とは違う環境に身を置きたかった。ブラジルに行けば、プロにつながると思った」。落ち着いた淡々とした話し方ながら、秘められた強い意志を感じさせる。
 チームにはプロ選手として正式登録され、試合には既に3回出場した。ポジションはディフェンダー(守備)だ。日本とは大きく違うブラジルのサッカーに最初は四苦八苦したが、徐々に慣れつつあるという。
 「ブラジルでは個々の選手が強い。日本人は遠慮しがちだが、皆『自分が、自分が』という感じ。なかなかボールを取りに行けない。でも日本でやってきたサッカーを忘れず、自分を出し、日本人らしいプレーを見せたい」
 小学校からサッカー少年で他の選手より身長が高く足も速かった。ユース時代は「負け知らず」だったが、「自分は全然できてなかった。技術も足りない」と今、未熟さを実感している。
 来る前に勉強はしてきたもののポ語もまだまだだが、練習後の取材中、片言ながら選手やコーチらと楽しそうに話し、すっかりチームの一員としての顔を見せている。
 「チームメイトが積極的に話しかけてくれるので助かる」と、人間関係には恵まれたよう。相手の言うことはよく理解できないが、あとで辞書を開く。練習や試合のかたわら、毎日一時間のポ語の勉強も欠かさない。
 最終目標はJリーグでのプレー。しかし、ブラジルサッカーにも魅力を感じつつある。
 「外国人の選手はこれまでも受け入れてきたが、適応が早いので驚く」と話すソウザ監督は「うまいし頭が良く、まだまだ若い。日本に帰ってからも、良いチームで活躍できると思う」と練習中に見せていた厳しい表情を崩した。