ニッケイ新聞 2012年6月19日付け
パラグアイで15日、土地なし農民と警察が衝突し、少なくとも15人が死亡、80人が負傷と16〜17日付伯字紙が報じている。
事件は同国の首都アスンシオンから約380km、ブラジルからは270kmのカニンデユ県コロニア・イビラ・ピタで起きた。起業家で元上院議員のブラス・リケルメ氏が所有する2千ヘクタールの農場に侵入した武装した土地なし農民150人と、農民撤去のために派遣された警官321人が銃撃戦となり、警官6人を含む15人が死亡、80人が重軽傷を負った。銃撃戦は収拾に時間を要し、ルーゴ大統領は陸軍を派遣。陸軍の到着後、農民たちは退散した。
カルロス・フィジオラ内務大臣は「農民たちが発砲してきたから対応しただけ」と弁明し、農民リーダーのホセ・ロドリゲス氏は「戦争を行うような武器は持ってない。22口径の銃を持っていただけだ」と反論したが、農民たちはゲリラとして闘争できるよう訓練されていたという。
事件後、ルーゴ大統領はフィジオラ内務大臣とパウリーノ・ロハス司令官を更迭したが、後任司令官のアルナルド・サナブリア氏はアルゼンチンへの偽煙草や武器の密輸容疑で告発されたことがあり、批判の声が出ている。また、土地無し農民も「大統領は貧しい農民の味方なのか、農民を武力で押さえつけたいのか」と不満を表明。ルーゴ大統領の公約は貧困農家の救済だった。
カニンデユ県は、「ブラジガイオス」と呼ばれるブラジル出身の農業労働者の存在で知られる。ブラジガイオスによる土地所有が過去30〜40年で進み、2、3月にはアルト・パラナ県で、ブラジガイオスの土地に土地無し農民が侵入する事件が発生。今回の武力抗争ではブラジガイオスの死者は出ていないようだ。