ニッケイ新聞 2012年6月23日付け
パラグアイ議会が21日、フェルナンド・ルゴ大統領の弾劾裁判を行うことを決め、22日中にも大統領罷免となる可能性があると22日付伯字紙が報じた。
パラグアイ議会での弾劾裁判は、下院での弾劾手続き開始決定を受けた上院が裁判実施を決めてから、22日午後の審理まで24時間という信じがたい速さで、ブラジルのジウマ大統領らは政治裁判の名を借りたクーデターと見ている。
21日下院での弾劾手続き開始決定は同国憲法に沿ったもので、下院の要請を受けた上院が同日中に弾劾裁判の実施を承認。ルゴ大統領は弁明に3日を要請したが、議会は24時間以内の弁明を強要、22日午後1時から2時間の弁明後、直ちに判決を下すという。
下院が21日に76対1で弾劾手続きの開始を決めた事は、「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」参加中のジウマ大統領のもとにも届き、大統領は南米諸国連合(ウナスール)に属する国々の大統領らに緊急会合を呼びかけた。
ジウマ大統領の呼びかけで集まったのはボリビア、コロンビア、エクアドル、ウルグアイの4カ国大統領で、ルゴ大統領との電話会談の後、アントニオ・パトリオッタブラジル外相始め、アルゼンチン、コロンビア、ウルグアイ、ベネズエラの5カ国外交官からなる視察団が21日夜、現地に派遣された。
ブラジル大統領府のマルコ・アウレリオ・ガルシア特別顧問によると、ルゴ大統領弾劾を試みる告発はこれまでにも23回あったが、今回のような急展開は異常だという。
ジウマ大統領らはクーデターという言葉を公式に使ってはいないが、ブラジル政府やウナスール首脳達はパラグアイが民主主義の原則に沿って弾劾裁判を行うよう要請。ウナスールもメルコスールも民主主義が原則で、ウナスール派遣の視察団が被告発者の弁護権などを無視したと判断すれば、パラグアイの脱退を要請する可能性も高い。
ルゴ大統領は21日、自分は民意で選ばれた大統領であり、辞任はしないと明言。22日のアスンシオンでは、大統領を支持する国民らが弾劾裁判中止を求めて抗議行動を起こしているが、同国議会は、60年以上政権を握っていたコロラド党を中心とする野党が圧倒的に多く、与党議員は下院80人中3人、上院も45人中3人のみだ。
今回の弾劾裁判は、同国東部で15日に起きた、農場を占拠していた農民と警官隊の衝突で17人が死亡した事件の責任を問うというのが直接的な原因だ。
だが、ルゴ大統領は、長期独裁で国有資産を私物化し、特権的地位を謳歌していたコロラド党が変化を嫌い、民主体制を潰そうとしたもので、「旧体制派が実質的な審議をせずに政治裁判を開き、素早くクーデター(ゴルペ)を行った」と野党側を糾弾している。