ニッケイ新聞 2012年6月26日付け
【既報関連】パラグアイ共和国上院が22日にフェルナンド・ルゴ大統領を39対4で罷免、後任にフェデリコ・フランコ副大統領が就任したが、周辺諸国は新政権を認めず、大使召喚などの姿勢を打ち出したと23〜25日付伯字紙が報じている。
60年以上続いたコロラド党右派政権を覆し、2008年8月にパラグアイの大統領に就任したルゴ氏が、任期満了まで1年余りで罷免された。
中道左派の「変革のための愛国同盟」所属のルゴ氏は、08年の大統領選では「貧者のための聖職者」として低所得者層の票を集め、就任当時は93%という高支持を得たが、右派が大勢を占める議会では常に少数与党の辛酸をなめ続けた。
ルゴ氏は1970年代後半〜80年代前半にエクアドルの貧民街で宣教活動を行い、帰国後も貧者救済などに奔走した元司教で、大統領選出馬のために司教を辞した。2009年に司教時代に複数の女性と関係を持ち子供もいた事が判明し、同年8月の支持率は30%に低下した。
議会では常に少数派のルゴ政権は、政策を打ち出しても議会の反対にあうの繰り返し。任期中に経済状況や教育の改善が見られた一方、副大統領のフランコ氏との意思疎通などで問題があり、他人の土地を不法占拠していた土地無し農民とこれを立ち退かせようとした警官隊が衝突、17人死亡という事件発生と両者が袂を分かった事とで、弾劾裁判への動きが一気に加速化した。
弾劾裁判は、21日午前の下院で手続き開始が決まり、同日午後上院が実施を決定。ルゴ氏は22日午前中に最高裁に裁判延期を要請の上、同日午後の審議には弁護士5人を派遣したが、弁明は2時間足らずで終わり、午後6時27分に罷免が確定し、午後8時には新大統領が就任した。
弾劾裁判の様子はブラジルやアルゼンチン、ウルグアイなど、南米諸国連合(ウナスール)所属12カ国外相からなる視察団が見守ったが、ルゴ氏の弁明の機会は不充分で、ウナスールや南米南部共同市場(メルコスール)の前提である民主主義の原則は守られなかったとの視察団の報告に南米諸国の態度は一層硬化。
バチカンやドイツなどは新政権承認を発表したが、ブラジルなどの周辺諸国は大使召還や事情聴取のための大使呼び戻しを行うと共に、28、29日のメルコスール首脳会談への新大統領の出席を拒否。メルコスールとしての制裁処置は29日に決まるが、ベネズエラは同国への石油輸出(同国の使用量の75%)停止も発表済みだ。
新大統領は同国内のブラジル人農夫の保護などを約束したが、ブラジルはウナスールなどの出方を見て処置を決める方針で、同国最大の貿易相手国であるブラジルが国境閉鎖との懸念が同国内で拡大している。ルゴ氏は、自己支持者と警官隊らの流血事件を回避するため裁判の結果を受け容れたと発表。陰の政権を組織して新政権を監視し、メルコスール会議にも出席する意向だ。