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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年6月27日付け

 サンパウロ市長選でハダジ候補(PT)を勝たせるために、マルフ率いる進歩党(PP)を引き入れたとの先週の報道を見て、ルーラは筋金入りの現実主義者だと痛感した。92年のサンパウロ市長選で彼に苦汁を飲まされたエルンジーナ(PSD)はマルフ嫌いで知られ、このためにハダジの副市長候補を降りた▼この件に関し、倫理的な論調でルーラの工作を批判する報道が多い。マルフはサンパウロ市長時代の不正蓄財疑惑で逮捕されており、国外ではインターポールから追われる身で、外国旅行すらできない。潔癖さを身上とするエルンジーナとは正反対、汚職イメージが強い政治家だ▼その一方で次の解説を聞き納得した。エルンジーナは元PTだから支持層はPTとダブるが、マルフはまったく異なる大衆層から今も根強い人気がある。だからエルンジーナを失ったとしても、マルフと連携した方がPTにとっての新票田掘り起こしには有意義と判断したとの分析だ。思えば、同じことをブラジリアですでにやっている▼良くも悪くも伝統勢力を代表するPMDBと同盟を組んで、PTは連邦議会与党となった。かつてのPTなら、思想的には対極の伝統右派と組むことは有りえなかった。このように、ルーラ時代のPTは現実主義を優先することで力を伸ばしてきた。次の標的は、最大のライバルたるPSDBの牙城・サンパウロ市だ。そのための選挙戦の布陣を着々としいている▼今回興味深いのは登場人物にアラブ系が目立つことだ。カサビ現市長しかり、マルフしかり、ハダジしかり。アラブ式裏交渉術に長けたツワモノこそがサンパウロ市を仕切るのか。だとしたら日系市長は遠い先の話だろう。(深)