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政府が84億レの景気刺激策=公的投資に期待かける=効果の程には早くも疑問=外因はね帰す決め手無し

ニッケイ新聞 2012年6月29日付け

 ジウマ政権が27日、企業投資向けの長期融資の金利引下げやトラックなどの装備充実を盛り込んだ景気刺激策を発表したが、専門家の間からは早くもその効果の程に疑問の声が出ていると28日付伯字紙が報じた。

 〃装備のPAC(経済活性化計画)〃と銘打った景気刺激策は、トラックや重機器類の購入などで製造業を支援し、公的資金を市場に投入する事で、経済成長を促そうというものだ。
 今年の国内総生産(GDP)は2%程度の成長で終わるとの見通しが強まる中、4・5%の目標を崩したくない政府が繰り出した景気刺激策は、給与支払い時に収める税金を15部門で売上げに応じて計算するよう変更した他、自動車や白物家電類の工業製品税(IPI)減免、投資向けの貸付や消費刺激のためのクレジット増額など。
 今回の景気刺激策も、社会経済開発銀行(BNDES)が企業向けに貸し出す長期融資の貸付金利(TJLP)を6%から5・5%に引下げる事と、トラックなどの購入による製造部門支援が大きな柱だ。
 09年から無調整のTJLP引下げは財務省や中央銀行が反対したが、ジウマ大統領のこだわりを、フェルナンド・ピメンテル商工開発相とルシアノ・コウチーニョBNDES総裁が擁護した。
 一方、トラックなどの購入は、当初予定されていた下半期の投資額を66億レアル上回る84億レアルというもので、経済刺激と活性化維持のためには投資が不可欠という姿勢の表れだ。
 具体的には、22億レアルかけてトラック8千台を購入するのを始め、農業用のトラクターなどからなる農業巡視用の乗り物キット3千組、ショベルカーやロードローラー3591台、救急車2125台などで、ミサイル発射用車両やスクールバス、道路警察用のバイクなども含む。
 ものによっては、下半期の生産量の36%から100%という数字は、解雇や希望退職者募集という事態に追い込まれている製造業保護の色合いが強く、医薬品なども輸入品と国産品の価格差が25%までの場合は国産品を購入するなどの案にも、国内産業保護の姿勢が窺われる。
 ジウマ大統領らはこのところ、国内経済の減速と復調の遅れは欧州の経済危機が原因との論を多用。ギド・マンテガ財相は欧州危機がブラジル経済を揺るがす事はないと言うが、市場では欧州危機の影響は深刻で、4・5%の成長は実現不能、今年の成長率は2〜2・5%止まりとの声が強い。
 国際経済の動向がインフレ圧力をそぐとの見方は経済基本金利(Selic)引下げの一因ともなっているが、今回の新政策の効果が出るのは年末の予想で、欧州経済危機の影響を覆すに足る新政策が出てくる様子もない。市場では、公的投資投入は時遅しとの批判や失望感、資金調達先への疑問も出ているようだ。