ニッケイ新聞 2012年7月3日付け
メキシコの大統領選挙が1日に行われ、制度的革命党(PRI)のエンリケ・ペーニャ・ニエト候補(45)が当選を果した。2日付伯字紙が報じている。
今回の選挙には4人が立候補したが、実質は、フェリペ・カルデロン大統領が率いる右派の国民行動党(PAN)所属でカルデロン政権の教育相だったホセフィナ・ヴァスケス・モタ氏(51)、前回2006年の選挙でカルデロン大統領に0・6%の僅差で敗れた左派の民主革命党(PRD)のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(通称アムロ)氏(58)、2000年まで71年政権を握っていた中道、PRIのニエト氏の争いとなった。
ニエト候補は約38%を獲得し当選を決めた。次点はアムロ候補で約31%、ホセフィナ候補は約26%に止まった。PRIは1日の23時45分に勝利宣言を行い、カルデロン大統領もニエト候補の勝利を認めた。
社会学者のジョン・アッカーマン氏は、ニエト氏の勝利は「泥沼化して先が見えない現政府の麻薬対策と社会格差の拡大に対するメキシコ国民の猜疑心が生んだ結果」と見ている。カルデロン大統領は2006年の就任当初から〃麻薬戦争〃とも呼ばれた麻薬撲滅対策を導入、警察幹部や州知事の逮捕も辞さない強硬姿勢で軍隊も大量に動員したが、4万7500人の死者を出しても解決に至らず、国際的な批判も受けていた。
PRIによる12年ぶりの政権奪回について、社会学者のロージェル・バルトラ氏は「現在、20人いるPRIの州知事がPRI政権時代を知らない若い世代に対して強い影響力を持っている」とも分析している。
また、勝因としてもうひとつあげられるのがニエト候補の女性人気で、その風貌はメキシコの国民的人気歌手にちなんで「政界のルイス・ミゲル」と呼ばれるほど。また、2010年に再婚したアンジェリカ・リヴェラ夫人は、メキシコでは「ガイヴォッタ」というテレノヴェーラでの役名で呼ばれるほどの国民的人気女優で、芸能誌への露出も非常に多かった。
だが、ニエト氏に関しては根強い反対勢力もある。選挙キャンペーン中の5月11日にイベロアメリカーナ大学で講演を行った際、学生たちから「ジョ・ソイ・132」という抗議活動にあった。これはニエト氏がメキシコ州知事だった2006年に、同州アテンコ地区での住民運動を武力で制圧したことへの抗議だった。また、ニエト氏が、2006年の大統領選挙で有力候補となったが汚職問題で断念したアルトゥロ・モンティエル氏の甥であるなど、有力な政治家の家系であることへの反感もある。
当選を受けてニエト氏は、「PRIは2度目のチャンスを与えられた。期待に応えられるようがんばりたい」と抱負を語った。任期は12月1日からの6年間となる。