ニッケイ新聞 2012年7月5日付け
地理統計院(IBGE)が3日、5月の工業生産は4月比で0・9%、昨年同月比では4・3%減少したと発表した。4日付伯字紙によれば、工業生産は9カ月連続して減少しており、中央銀行も必要に応じて為替への介入も行う意向を表明した。
自動車産業への工業製品税(IPI)減免税など、矢継ぎ早の政府の対応にもかかわらず、工業生産は9カ月連続でマイナス成長となり、経済の減速化は続いている事を露呈。今年の経済成長率を下方修正するコンサルタント会社も出ている。
5月の工業生産が9カ月連続で減少したというのは昨年同月比での数字で、今年に入ってからだけを見ると、昨年同月比3・0%、4・1%、2・3%、3・5%、4・3%の減少。
前月比の場合、2月に1・2%の成長を記録したため、3月以降3カ月連続の減少で、減少率は0・8%、0・4%、0・9%。今年の累計は3・4%減となった。
5月の数字で見ると、全体の足を引っ張ったのは比重の大きい自動車産業と食品産業。5月21日発表の自動車産業へのIPIの減免税は、6月の新車販売数増加には繋がったものの、負債を抱えた消費者も多く、生産向上への効果は短期的との見方が一般的だ。
5月の工業生産を分野別に見ると、前月比で減少したのは、電気材料と通信機器10・9%、皮・製靴5・3%、自動車4・5%、紙・セルロース3・0%など。昨年同月比では、電気材料と通信機器24・3%、煙草23・3%、自動車16・8%が目立つ。
逆に前月比で生産が伸びたのは金属産業13・2%が突出しているが、2位のゴム・プラスチックも2・6%の伸び。昨年同月比でも、航空機などの輸送機器6・3%、出版・印刷4・0%、化学製品2・1%など、伸び幅は小さい。
工業生産が9カ月連続で減少した事は、昨年8月の経済基本金利(Selic)の引き下げ開始が経済の減速化を先読みしていた証拠であると共に、景気の冷え込み改善への兆しが見えてきていない証拠でもある。
政府の経済スタッフは「下半期から回復」を繰り返してきたが、相次ぐ政府の刺激策発表後も景気浮上の兆しが見えないため、市場関係者は今年の国内総生産(GDP)の成長率を下方修正。MBの3・5%を2・0%、ローゼンバーグ&アソシアードスの2・3%を1・7%にというのはその一例だ。
一方、中銀は3日、インフレ抑制のための為替市場介入という考えを改め、工業生産の保護・促進のための介入も示唆。工業界は1ドル=2・2レアル程度を望んでいるとの声もあり、中銀のアウド・ルイス・メンデス理事が(2日から続く)1ドル=2レアル以下という相場は望ましくないとの考えを示した後の為替相場は、再び2レアルを超える動きに戻った。