ニッケイ新聞 2012年7月11日付け
ブラジルでは近年、労働者の教育レベル向上などで正規雇用が増えているが、今年の労働市場では景気減速が長引き、初就職者の数が昨年より11%減ったと8、9日付エスタード紙が報じた。
地理統計院(IBGE)の全国家庭サンプル調査(Pnad)によると、09年の正規雇用は51・6%で、02年の44・2%と比べ、7・4%ポイント増えた。1993年から02年は42〜44%程度で横ばいしていた事から行けば、格段の進歩だ。
02〜09年の正規雇用は労働者数の増加もあり、900万人以上増えたが、この数字は自営業のように個々人が運営や収入の責任を取る場合は含まない。自営業などを外した場合の非正規雇用は、43・6%から37・4%に減少した。
正規雇用の増加には労働者の学歴向上も影響。就学年数が15年以上(大卒以上)の非正規雇用は02年の26・1%が23・4%に減り、非正規雇用が最も多い就学年数3年以下の人の場合も、62・8%が59・1%に減っている。
一方、労働人口に占める割合を就学年数別に見ると、15年以上は7・2%が9・4%、11〜14年は26・8%が37・6%に増加。逆に、8〜10年は18・3%が18・1%、4〜7年は28・7%が22%、3年以下は19%が12・9%に減少した。
労働市場では熟練工の不足が頭痛の種で、新しい技術の開発や新種の機械や方法の導入が困難などの苦情が聞かれるが、労働者の学歴向上は職場訓練を容易にするなどのメリットを生む。
正規雇用の増加は、零細企業支援サービス機関(Sabrae)などの支援や起業家の企業登録を容易にする法律の施行などで正式登録された企業が増えた事にも関係。正規雇用率は農村部より都市部の方が高い。
一方、昨年後半から表面化した景気の減速は、訓練経費を減らすために経験者を優先する企業の増加など、労働市場の需給条件に変化を生じさせた。この変化は初めての職を探す人達には新たな障壁となり、今年1〜5月の初就職者は123万1099人で、昨年同期より11%減。新規採用に再雇用、復職などを加えた5カ月間の採用者数は、全体で891万5855人だった。
初めての職を探す人の泣き所の一つは、大学や専門学校を出ても、専攻を活かせる職場が見つからない事。サンパウロ州の私立大学で国際交易について学んだレアンドロ・マルチンスさん(24)もその1人で、造船工学について学び直すため、リオ連邦大学を再受験。後期からのコースに受かったが、UFRJ入学か、年末にサンパウロ総合大学工学部を受験するかで迷っている。
好景気の時以来、所得向上で家族収入が増え、早めに年金生活入りする高齢者や就学のため職離れする若者も増えている中、目先の利害で技術者養成などへの投資を減らせば、回復期の戦力縮小に繋がる可能性もある。