ニッケイ新聞 2012年7月13日付け
中銀の通貨政策委員会(Copom)が11日、経済基本金利(Selic)を0・5%引下げ、年8%とする事を全員一致で決めたと12日付伯字紙が報じた。昨年8月以降8回連続となる基本金利引下げは市場の予想通りで、昨年8月からの下げ幅は4・5%ポイントになった。
アレッシャンドレ・トンビニ中銀総裁は、今回の基本金利引下げは、欧州経済危機などの国際的な要因と国内経済の回復の遅れでインフレ圧力も軽減しており、景気回復を促進するためと説明。ブラジル銀行と連邦貯蓄銀行、ブラデスコは11日の内に、自動車や建築資材購入のためのローンや特別小切手などの金利を16日から引下げると発表している。
従来はインフレ抑制目的だった基本金利の調整が政府の金融政策と共に景気刺激策的意味を持つようになったのは、08年のリーマンショック以後。その背景には、基本金利の引下げで企業や個人が銀行から融資を受ける時の貸付金利が下がれば金融市場が活性化し、国内消費の促進にも繋がるため、国際的な金融危機に伴う景気後退や経済減速化からの脱出が可能との判断がある。
ところが、地理統計院(IBGE)が11日、5月の小売販売は4月比で0・8%縮小と発表。低金利で金融市場が活性化され、クレジットの利用が増えれば消費も活性化との見通しを裏切るような結果で、母の日商戦などで上向くと見られていた5月の小売販売が08年11月以降最大の落込みとなった事は、市場関係者も驚かせた。
経済減速化がいわれても大きな変化がなかった小売販売が、建築資材で11・3%、家具・家電類で3・5%などの落込みを見せた事が、国内消費の冷え込みといえるか否かはもう少し観察が必要だが、負債を抱える消費者が増え、債務不履行も拡大している事や、欧州経済危機で生じた経済減速化が予想以上に長引き、雇用や所得の拡大にかげりが見え始めた事の反映といえそうだ。
また、商品価格低下でインフレ抑制効果も生むと期待された工業製品税(IPI)の減免税などの景気刺激策が、政府の思惑通りの結果を生んでない可能性もある。現在のブラジル経済は08〜09年の国際的な金融危機の時とは異なる状況下にあり、消費刺激型の経済政策は限界に突き当たっていると評価する一部の専門家が、今は投資の時期と強調する所以だ。
今年後半から景気回復と言っていた政府関係者が今年の経済成長の見込みを下方修正する動きがある事は11日付エスタード紙が報じたが、5月の小売販売が落込んだとの報道で、従来は8月の引下げで終わりと見られていた経済基本金利の引下げが10月まで続くとの見方も出始めた。