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「国力はGDPで測るべからず」=大統領が欧州の政策批判=労働市場はまだ安泰だが=工業生産5年前に逆戻り

ニッケイ新聞 2012年7月17日付け

 5月の経済活動は4月より0・02%縮小と中銀が発表した12日、ジウマ大統領が「国力は国内総生産(GDP)で測るものではない」と発言。13日には「ブラジルは欧州のような解決策は採らない」との発言もあったが、欧州経済危機による経済減速化が長引けば来年からは失業率拡大との声も出始めている。

 中銀が毎月の経済活動の動向を測定して算定する経済活動指数(IBC—Br)によると、5月の経済活動は4月比で0・02%落込み、昨年12月からの成長率は実質ゼロとの報道は13日付エスタード紙だ。
 16日には、市場関係者による2012年の経済成長率見通しが10回連続で下方修正され、従来の2・01%より更に低い1・9%という新しい数字が発表された。この予想が的中すれば、国際的な金融危機の影響で0・6%のマイナス成長を記録した2009年以来の低成長率となる。
 5月の経済活動は0・2%の落込みとの予想に反して、0・02%の落込みで済んだ。その一方で成長予想が下方修正されたのは、5月の工業生産は2007年10月の実績を下回り、同年8月のレベルまで後退したとの14日付エスタード紙の報道などが一因だ。
 経営コンサルタントや銀行など7社による今年の工業生産予測は昨年比0・5〜2・2%の減産とされ、1991年以降の工業生産成長率が月0・23%だった事と比べると、その深刻さが際立っている。
 工業界の不振はレアル高によって輸入が急増し始めた時期からいわれて来たが、2011年下半期に経済の減速化が表面化し始めて以降、一段と深刻になっている。
 中には、レアル高時代に原材料を輸入する事にしたために原材料の供給会社が潰れてしまい、ドル高による影響緩和のために国内調達に切り替えようとしても切り替え不能という企業もある。
 また、経済危機や経済減速に喘ぐ国が国内産業の保護に走った事が工業製品輸出を更に制限。15日付エスタード紙によれば、6月の輸出は昨年同月比13・6%減(加工品では21・6%減)で、上半期の輸出の伸びは昨年同期の0・4%増に終わったという。
 経済活動停滞を示す数字を前にしたジウマ大統領は、「国力は青少年への政策で測られるべきでGDPで測るものではない」と発言したが、これは経済減速化の事を取り沙汰されないため。スペインが増税や経費削減策を採ったのに対し「ブラジルは欧州のような解決策は採らない」と発言したとの14日付フォーリャ紙報道は、現政権の景気刺激策擁護の表れだ。
 15日付エスタード紙によれば、工業以外の部門の雇用は増えており、経済減速化の影響は労働市場には及んでいないというが、投資が落込んで減速状態が長引けば、来年上半期には失業率拡大との声も出始めている。