ニッケイ新聞 2012年7月17日付け
今年の県連主催『第15回日本祭り』には、ブラジル進出に向けた第一歩として三重県と福岡県の企業が初参加した。それぞれブースを出展して地元産の商品を展示・販売し、多くの来場者の関心を集めた。三重県からは「清水醸造」「寒紅梅酒造」の2社が日本酒を、「万協製薬」が化粧品を持ち込んだ。県会議員や県庁職員など十数人が来伯、「美(うま)し国三重」と銘打ち、県そのものをアピール。福岡からは新感覚調味料「ゆずすこ」などを販売する「高橋商店」の高橋努武社長(45)のほか同県庁の職員4人が来伯した。
三重県の訪問団来伯の発端となったのは、鈴鹿市で活動するNPO法人「愛伝舎」代表の坂本久海子さん。同県人会長で日本祭り実行委員長の前田ネルソン氏から「祭りに参加する日本企業を募ってほしい」との依頼を受け、誘いに乗ったのが前記の3社だった。
「一度行ってみたかったけど、きっかけが掴めなかった」と話すのはその一社、清水醸造(鈴鹿市)の清水慎一郎社長(56)だ。経済成長や三重からの移住者、日系人も多いことからブラジルに注目していた。
そこに「寒紅梅酒造」も加わり、両社の酒それぞれ3種、訪問団が一人6本ずつ運んで計72本を持ち込んだ。
他県や国内産の日本酒と差別化を図るため、奈良時代から御饌(みけ、天皇の食事)の食材を作っていた県として、「神の国から来た酒」というイメージを打ち出し、まずは味を知ってもらおうと有料で来場者にふるまった。
「うちの酒は農業生産品。伝統的な手法で造っている」と魅力をアピールした清水社長は「評判は上々。まずはレストランなどに売り込み、取扱店を決めて安定した販売ルートを確立したい」と意気込んだ。
スキンケア製品開発・製造の「万協製薬」の松浦信男社長(50)は、地元産の伊勢茶などを配合したハンドジェルやリップクリーム、伊勢志摩の真珠クリーム、日焼け止めなど5種、サンプル600個を持ち込んだ。
「日本の商品は関心が高い。早く売ってほしいと言われた」と高反応に嬉しい悲鳴を上げ、「来年来る頃にはどこかで売れるようにしたい」と期待を込めた。
一方福岡県のブースでは、「高橋商店」の調味料「ゆずすこ」など4種の試食販売が行われた。
「ゆずすこ」は、九州で一般的な調味料・ゆず胡椒を液状化したもので、ゆずの皮と唐辛子、酢のみが原料の新感覚の液体辛味調味料だ。すでに各方面で話題を呼び、これまで複数のメディアに取り上げられている。 また、のりの佃煮にゆずすこを加え、チューブに入れた「のりくろ」は白いご飯以外にも生野菜や寿司、海苔巻きや肉など幅広く使えるようにと開発されたもの。一時間ほどですぐに無くなってしまう人気だったという。
ゆずすこはゼンダイ社の取り扱いで既にブラジルに輸入されており、今後日本食レストランなどで展開を図っていくという。
「ブラジルの方に、日本で作られたものを楽しんでもらいたい」という高橋社長。「思った以上に反応が良かったです」と笑顔で語った。