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YOSAKOIソーラン10周年=第9回=グルッポ・サンセイ強さの秘密=(上)リーダー育成と家族の支え

ニッケイ新聞 2012年7月20日付け

 当地のYOSAKOI大会初出場にして総合優勝を果たし、その後も5回の優勝をさらったグルッポ・サンセイ。一体、その強さの秘密はどこにあるのか。パラナ州ロンドリーナ市にある、同グループの会館を訪ねた。
 午後6時半—会館1階にある鏡張りの広い一室で、主クラスに所属する数人の踊り手が中級クラスの3人を教え始めた。練習は年間通して火、木の2回で、両クラスともに各1時間。踊り手22人に歌い手と太鼓奏者が加わる。年齢は13歳〜30代だが、今年は3〜10歳までの子どもクラスも開設した。
 2年前からリーダーを任されている田中タチアナさん(21、三世)は「私たちのグループにも、誰も専門家はいない。振り付けは2人のメンバーが作って、ユニフォームは太鼓グループの建築関係のメンバーがデザインしている」と語る。
 6月にあった札幌の大会に出場するためブラジル国旗色で作ったTシャツが、今年のユニフォーム。はじめは他のグループ同様着物風だったが、「YOSAKOIはお金をかけなくても出来ると伝えたい」と、昨年からTシャツにした。
 グループの強さの理由を聞くと、しばらく考えて「多分、いつも次のリーダーを訓練しているからだと思う」と答えた。ここではリーダーも振り付け指導も交替制で、特定のメンバーに役割が偏らないようにしている。グループからリーダー性のある人が選ばれ、現リーダーと一緒に指導に携わる。これはトレーニングであると共に、リーダーに適切かどうかを判断する試験期間でもある。
 振り付けも、必ずしもダンス経験者が担当するわけではない。振り付け担当の小林ステファニーさん(21、四世)は約5年前にグループに入るまで、一切ダンス経験はなかった。「振り付けは2人で作って、ペア同士でやり方を伝えていくの。一番大事なのは、グルッポ・サンセイらしいダンスにすること」と語る。
 グルッポ・サンセイらしさとは、初代振り付け担当の土屋ミリアンさんが残していった、切れ・力強さ・エネルギーのこと。「ミリアンは空手をやっていて、この3つのことを皆に教えてくれた」。彼女がいなくなった今も空手精神は受け継がれ、彼らの踊りを独特なものにしている。
 日本語が話せる数少ないメンバーの一人、太鼓奏者の井本デニスさん(22、四世)は「メンバーだけじゃ弱い。家族が支援してくれることが僕たちの強み」と説明する。
 催しを企画する際は、メンバーの家族も会館に集まり話し合う。訪日資金を集めるためのイベントにも協力してきた。家族のサポートあってこその札幌大会出場だった。
 「YOSAKOIは新しいけど、敬意、感謝、規律という古い日本の価値がある」。それを日系・伯両社会に伝えることに喜びを見出している。そして、「いい人間、いいリーダーになりたいというのも、目的の一つです」と付け加えた。
 メンバーたちの練習は真剣そのものだが、大会に勝つためにがむしゃらになっているわけではない。彼らの目線はもっと先にあるようだ。(つづく、児島阿佐美記者)

写真=会館に集まったメンバーたち/資金集めに55回ものイベントを開催し、家族も力を貸した