ニッケイ新聞 2012年7月21日付け
サンパウロ市軍警が18日夜、ある男性の車を追跡して停めたあと、明確な理由もなく射殺したとして問題視されている。20日付伯字紙が報じている。
18日22時30分頃、出版関係の企業家リカルド・プルデンテ・デ・アキノさん(39)はサンパウロ市西部のルイ・ワシントン・ペレイラ広場前のコルージャス大通りで軍警により射殺された。アキノさんが運転していたフォード・フィエスタには7発が撃ち込まれ、うち2発を頭に受けたアキノさんは、病院に搬送されたが死亡した。
軍警によると、西部アルト・ド・ピニェイロスのナチンギ通りを車で通り過ぎたアキノさんを軍警がスピード違反で止めようとしたが、アキノさんが無視して走り去ろうとしたため、車とオートバイで800メートルほど追跡。方向転換を試みたアキノさんの車は、コルージャス大通りで追跡車とぶつかって停車した。そこでアキノさんの車に近づいた軍警は、アキノさんが手に持っていた黒い物を拳銃と勘違いして発砲したという。
市警は、アキノさんに発砲した軍警3人を規律違反と殺人容疑で逮捕した。市警警部は、アキノさんの車からは50グラムの大麻が発見されたというが、遺族は大麻の使用を否定している。
軍警のジョゼ・ヴィンセンテ・ダ・シウヴァ予備役大佐は、「発砲は最後の選択肢」で「追跡中の車を止めるには、タイヤだけを撃てばよく、無線で連絡をとりあってもっと多くの車両で包囲するなどの手段もあったはず」と発言。また、軍警の作戦実行時基本手順では、緊迫した状況で発砲する時も命に別状がない箇所に2発程度が原則とされている。
軍警のハドソン・カミリ司令官代行は19日午後、記者会見を行い、アキノさんの遺族に謝罪したが、3人の軍警がとった行動は「理論的には正しかった」と軍警らを弁護する側面も見せた。
また、アキノさんが射殺された2時間後にはサントスでも、スピード違反を犯した車を追跡していた軍警が、車に25発の発砲を行い19歳の青年を射殺、15歳の少女と20歳の青年が負傷する事件が起きており、アウキミンサンパウロ州知事は、19日に双方の遺族への弔意を文書で表明。事件の詳細を調査し、責任者を厳罰に処すとした。
軍警3人の弁護士をつとめるフェルナンド・カパーノさんは、軍警の行きすぎともいえる行為について、「軍警8人が犯罪組織の命令で殺された形跡があるなど、ここ数カ月緊張状態が続いていることが警察官に心理的な影響を及ぼしているのではないか」との見解を示している。