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大豆がブラジル貿易を救う=米国の干ばつで価格高騰=作付面積増やす農家続出

ニッケイ新聞 2012年7月24日付け

 米国が過去50数年で最悪の干ばつに見舞われている事で大豆の国際価格が高騰し、鉄鉱石以上の輸出品目となっていると22日付エスタード紙が報じた。
 米国やロシア、オーストラリアでの干ばつで、大豆やとうもろこし、小麦の生産に大きな影響が出ている事は20日付エスタード紙も報じているが、国土の約半分が干ばつに見舞われている米国では、農務長官が「雨が降るよう祈っている」というほど深刻な状況だ。
 同国の大豆ととうもろこしは4分の3以上が干ばつ地域で生産されており、収量が3分の1以上減る可能性がある。このため、ここ数週間で大豆価格は24%、とうもろこし価格は38%高騰。価格上昇率は、穀物を求める人々が30以上の国で暴動を起こした2007—08年の農業危機の時以上で、小麦価格もロシアが輸出を禁じた2010年以上の急騰中。
 世界最大の大豆生産国である米国での干ばつは国際価格にも直結し、20日のシカゴ市場では、大豆1ブッシェル(27・2155キロ)が7月始めより15%高の17・57米ドルで取引された。同価格は、リーマンショック前の2008年に記録された16・50ドル以上の最高値だ。
 国際的な価格高騰を受け、パラナ州パラナグア港では60キロの大豆が85レアルで取引され、農産物の取引の中心地といわれるマット・グロッソ州ソリーゾの農家は、60キロ当たり73・5レアルを受け取った。
 米国の干ばつによる価格高騰もあり、上半期の大豆や加工品輸出額は、同時期の貿易黒字額の倍以上に当たる159億米ドル。鉄鉱石価格の低下も重なり、輸出全体に占める大豆の売上は、鉄鉱石の12・7%を上回る13・6%に達した。
 世界の大豆在庫量はブラジルやアルゼンチンが干ばつに見舞われた昨年から減少中で、現時点で400万トンとされる米国での減収は国際問題だ。8月以降も雨が降らなければ被害は拡大するため、国連食糧農業機関なども、食糧価格高騰への懸念を隠せない状況だ。
 他方、米国などでの干ばつと減収による価格高騰で、作付面積を拡大する農家が続出しているのがブラジル。綿の栽培地や牧畜用地を畑にし、作付面積を昨年より24%増やす予定の〃大豆王〃エライ・マジ・シェフェル氏は、その一例。作付面積拡大などで、2012/13農年の大豆収量が2011/12農年の8千万トンを上回る事は必至で、天候が良ければ8230万〜8300万トンとの見方も出ている。
 予想的中なら大豆生産世界一の座を米国から奪う可能性も出てきたブラジルには、世界の食糧庫を守る役目も期待されるが、国内では、食料品価格の上昇がインフレ圧力になる気配も出始めている。