ニッケイ新聞 2012年7月27日付け
ジウマ大統領は25日、ロンドンでキャメロン英国首相と会談し、ブラジル奨学生への英国側の待遇やシリアとイランをめぐる中東問題などについて厳しい物言いを行った。27日付伯字紙が報じている。
ジウマ大統領とキャメロン首相はロンドンにある首相官邸で会談を行った。話は当初和やかに進み、キャメロン首相は英国とブラジルの友好関係の強化を強調し、大統領はロンドン五輪の運営に対し「素晴らしい」を連発し褒め称えていた。
だが、話が核心をつきはじめると、大統領はキャメロン首相が述べた友好関係に関し、きつい注文を展開し始めた。
大統領がまず呈した疑問は、「英国政府がブラジルの学生や研究員への窓口を狭めているのではないか」ということだ。伯英両国は2011年、ブラジルからの学生や研究員を英国の100以上の大学で受け入れるための合意文書を取り交わしている。合意では、ブラジルは学生への奨学金や大学側から課せられる緒料金などを負担し、英国はブラジルからの奨学生向けの定員を確保し、ビザ取得を簡略化することになっていた。
この合意は国境を越えた科学研究をめざす〃シエンシア・セン・フロンテイラ〃実現のためだが、実際には、英国がブラジル学生に英語の試験を課すことや12〜15カ月という短期間のビザが大半であることで、奨学生として受け入れてもらえない、研究半ばでの帰国を強いられるなどの苦情が出、英国がブラジル学生受け入れ窓口を狭めているとの疑問が生じていた。ブラジル政府はすでに、英国への奨学生として選出されたが希望通りの有効期間のビザが得られなかった学生約100人を米国に派遣している。
また、ジウマ大統領はシリアやイランの問題に関しても英国首相とは異なる見解を示した。大統領はキャメロン首相が推進している両国への武力介入を実質否定した。
中東問題に関しては、再選に向けた選挙戦中の米国のオバマ大統領が同件への言及を避け、ロシアや中国が武力介入に否定的であるため、キャメロン首相が介入への最大の旗振り役と目されている。アサド大統領の孤立化とイランへの圧力強化をめざす同首相が、ジウマ大統領に協力を要請するであろうことは会談前から予想されていた。
だがジウマ大統領は、アサド大統領の民衆弾圧は「許容範囲を超えている」としながらも、それ以上の言及を避けた。アントニオ・パトリオッタブラジル外相が会談前に「武力では何の解決にもならない」と語った見解を繰り返した形だ。
またシリアやイランへの武力介入は「原油価格の高騰を招き、欧州などが抱えている経済危機がより長引く」との懸念を表明。大統領は、イランの核保有に関してはルーラ政権時代の2010年にイランとトルコの間で交した「テヘラン宣言」を尊重するとし、イランとの調停役でありたいとの見解を示した。